みんなのGOTY(Game of the Year 2024)

Game of the Year 2024
ゆきぼう さん
Balatro
ゲームの重要な要素そして目的の一つとして、現実の遊びを落とし込む、というものがある。 歴史上最古のコンピュータゲームと呼ばれるものは、諸説あるが、1962年のスペースウォーといわれている。が、その前の1958年には「Tennis for Two」と今では呼ばれているテニスゲームが開発されている。しかも「PONG」のようなバーでボールを跳ね返すのではなく、この時点ですでに放物線を描いて落下するゲーム性を備えていた。 その後、コンピュータゲームはチェスやテニスの再現だけでなく、この世のあらゆる事象をも再現可能になった。SFの世界のような、没入型のゲーム世界に飛び込むことができる日もそう遠くはないだろう。 しかし、ゲームはやはりゲームである。そして、ルールが単純で、尚且つ奥が深ければ深いほど人はゲームにのめり込む。プリミティブな体験に勝てる要素は全宇宙を探してもそうそうあるものではないのだ。 そして、Balatroである。ポーカーをコンピュータ上に再現し、そこに一味加えただけのように見えるこの至ってシンプルなゲームが、しかし恐ろしいほどの中毒性を備えていた。 ルールは簡単。ポーカーの役を揃えて規定のチップ数を稼ぐことができれば敵(当ゲームではブラインドと呼ぶ)を倒し、次へと進むことができる。とはいえ、敵の姿が見えるわけではなく、なんなら敵とポーカーで戦うわけでもない。プレイヤーは役を揃えるだけで良い。そして、画面上部に並ぶジョーカーがこのゲームに最大の華を添える。それが、ジョーカーの持つ特殊能力の発動と、他のジョーカーや役のレベル、そして追加効果を生む別の要素、タロットカードと惑星カード、バウチャーとのシナジー効果である。 ジョーカーにはそれぞれ固有の能力があり、特定の役を揃えたり、揃え方を工夫したりする事でその力を発揮する。そして、ジョーカーによっては役のポイントを何倍にも、いや、うまくいけば何百倍にもして相手にぶつけることができる。この時のジョーカーのアニメーション、サウンド、視覚効果が絶妙に素晴らしく、小気味いい音とともに膨れ上がっていくポイントを見ているだけで、もう脳汁がドバドバ状態になること請け合いである。 そもそものポーカーのルールを知らない人向けに、いつでも見ることの出来る役の表やガイドが備わっていて、我が家の9歳の娘でも簡単にルールを理解することが出来た。ゲームとはかくあるべし。 ゲーム業界は、莫大な予算と膨大な人員を投じて作られるAAAゲームが支えていると信じる人々がいる。だが、わたしはこういう、アイデア一つで無限の面白さを作り上げることが出来る事こそがゲームの真髄だと信じている。Balatroも決して突然変異種ではない。これまでゲームが作り上げて来たジャンルや文化がないまぜになって、ここ十年単位でのインディーゲームの台頭があって、さらにデッキ構築ローグライトの先駆けであったSlay the Spireのような先達があったからこそ生まれたものなのだ。
Game of the Year 2024
むらしゅん さん
Minds Beneath US
Minds Beneath USは台湾のBearBone Studioが制作した、SFミステリーアドベンチャーゲームです。配信プラットフォームは2024年11月時点でSteamのみ。日本ではまだマイナーなこの台湾発インディーゲームが私のGOTY2024となりました。 ■世界観と舞台設定 世界観は近未来のサイバーパンクで、場所は台北や上海あたりを想像するとしっくりきそうです。この都市の交通はすべて国のAIによって自動化されていて、そのAIは演算力によって駆動しています。演算力が足りなくなると交通がマヒし、渋滞が起こるという具合です。 そして恐ろしいことに、この世界ではその演算力を人間の脳から抽出します。人間の労働コストよりもコンピュータの価値の方が高いため、人間から直接演算力を得るのが最も安価な方法なのです。そんなディストピアな世界で、貧しい人々は自らの身体を演算力の原資として企業に提供し、その対価を受け取ってなんとか日々を暮らしています。そして、この世界でAIが管理しているのは交通機関だけではありません。人々の個人情報や行動履歴はすべてAIに監視され、企業の入社試験ですらAIまかせです。あらゆる物事が記録・統制され、極限まで自動化された監視社会都市。それがこの物語の舞台です。 そんな世界でプレイヤーは主人公の「ジェイ」を操作し、その演算力を生産する工場でスタッフとして働きながら、組織が抱える様々な構造的な問題に立ち向かうことになります。 ■「選別組」と「操作組」の対立 工場には「選別組」と「操作組」と呼ばれる2つの対立する部署が存在します。 「選別組」は演算力のために身体を提供する人々(供給者)の選別と採用を行います。演算力供給はスラム街で暮らす貧しい人々にとっては破格の報酬を得られる仕事なので、選別組はたくさんの希望者の中から適性のある人材を見極めて採用します。逆に言えば、本当に生活に困っている人でも適性のない人は心を鬼にして不採用にしなければなりません。選別組のスタッフはそのようなストレスに常に向き合いながら仕事をしています。 「操作組」ではその供給者から演算力を抽出する作業を行います。その作業は高度な機材と専門的な技術を必要とする上、事故が起きれば供給者の命を奪いかねないシビアな仕事です。また、操作組は老朽化する設備のメンテナンスも担当していますが、上層部に修繕予算を要求してもなかなか許可がおりません。そのため結果的に設備の老朽化による事故は増え続け、事故によって命を落とす供給者も増え続けることになります。操作組の多くのスタッフはこのようなアンモラルな状況にうんざりしながら、日々の仕事をこなしています。 操作組はいわゆる技術職で業務もシビアなので、その給与は選別組に比べて高く設定されています。しかし、選別組は操作組の具体的な業務内容を把握していないため、操作組の給料が自分たちより高いことに不満を持っています。対して、操作組は選別組が質の悪い供給者を採用する事や、自分たちより楽な仕事をしながら給料について文句を言っている事に不満を持っています。 この構図を見て、会社勤めをしている方なら「組織あるある」だと感じるのではないでしょうか。このようないわゆる総合職と技術職による対立構造は現実の組織でもよく見られる現象です。 ■問題だらけの工場と愛すべき同僚たち このように工場では供給者の死亡事故が多発しており、ついにはその遺族による報復テロ事件が発生してしまいます。主人公の活躍もありテロリストは確保されその場はいったん収まりましたが、今後また同じようなことが起こる可能性は十分にあります。 さあ、プレイヤーはこれらの問題にどう向き合うのか。選別組と操作組どちらか片方の部署に肩入れするか、双方を立てながらバランスをとるか、または問題をガン無視して静観することも(たぶん)できます。どれが正解という選択肢はありません。このゲームはプレイヤーに選択を求め、「異常に作りこまれた選択分岐」によって、あなたの選択に答えてくれます。 この「異常に作りこまれた選択分岐」は、あらゆる登場人物との会話でも同様です。工場に勤務する同僚たちは、会話の中であなたの選択に応じて実に多彩な反応を返してくれます。愛すべき彼らはとても人間らしく、その個性は「異常に作りこまれた選択分岐」によって有機的に立ち上がり、まるで本当に生きている人間と会話をしているような感覚にさせてくれます。 ■リニアでスリリングなストーリー展開 ストーリーの前半ではこのような演算力工場でのすったもんだが描かれますが、後半は国家や政治や特殊部隊が介入し、よりスケールの大きいスリリングな話になっていきます。前半が「組織あるある」だとしたら、後半は「政治あるある」というような、シリアスでグロテスクな展開がプレイヤーを待っています。(このレビューを読んだ人にはぜひこのゲームをプレイして欲しいので、後半部分には一切触れずにおきますね。うふふ!!) さて、このように書くとまるでこのゲームが「デトロイト・ビカム・ヒューマン」のようなマルチストーリー・マルチエンディングのようなゲームに思えてくるかもしれませんが、実はけっこう違います。一応最後は簡易的なマルチエンディングになっていますが、ストーリー自体はかなりシンプルでほぼ一本道です。そういう意味ではジャンル的にアドベンチャーと言うよりビジュアルノベルやナラティブに近い作品です。このゲームの良さは前述したとおり「異常に作りこまれた選択分岐」にありますが、それはあくまでも登場人物との会話であったり、限られたシークエンスで限定的に機能するものです。そこだけ、誤解の無いように断っておきます。 ■欠点も多いがそれ以上の良さがあるゲーム このゲームは低予算のインディー作品なので、大掛かりな仕掛けはほとんどありません。当然ボイスも無いし、キャラクターの顔に至っては全員のっぺらぼうです。正直ストーリーの突っ込みどころも少なくないし、若干のご都合主義も垣間見えます。そういう意味ではそれなりに欠点の多いゲームとも言えますが、その欠点を補って余りある良さと新しさがこの作品にはあります。 選別組と操作組の対立構造に代表されるように、この作品は終始一貫して「絶対的な正義や普遍的な正しい価値観は存在せず、時代や立ち位置によって常に変わるのだ」というメッセージを訴えかけてきます。そして繰り返しプレイヤーに選択をさせ、その結果を繊細にフィードバックさせることで物語への没入を促し、プレイヤー自身は否応なく自らの選択の重さとその結果に向き合わされることになります。すべての人が満足する選択肢はほぼなく、誰かが得をすれば誰かが損をする、そんなリアルなシビアさも気に入りました。この作品は小説でも映画でもない、ビデオゲームだからこそ表現できる手法をしっかりと提示してくれます。そしてそれは、ビデオゲームというジャンルにおける大きな達成であると私は感じます。低予算ながらこれだけ奥深い独自の魅力を放つビデオゲーム作品を私は他に知りません。 ・・・・・・ こんなクソ長いレビューを最後まで読んでいただきありがとうございます。 この作品の良さはまだ書ききれませんが、これ以上長いと誰も読んでくれなそうなので、これくらいにしておきます。 最後にもうひとつだけダメ押しすると、私はこのレビューの冒頭に「プレイヤーは主人公のジェイを操作し~」と書きましたが、これは意図的にそのように表現しました。実は本レビューではこのゲームのもう一つの大きなフックについて敢えて触れていません。このゲームではプレイヤーは主人公のジェイではなく、「ジェイを操作する謎の存在」として関わることになります。 「え?どういうこと??」と気になる人はSteam Storeで「圧倒的好評」のこの作品をぜひプレイしてみてくださいね。うふふ!! 【Steam store】 https://store.steampowered.com/app/1610440/Minds_Beneath_Us/
Game of the Year 2024
フィン さん
ZEPHON
RTSの対戦要素を、ターン制の4Xゲームに落とし込んだような印象を受ける作品。 舞台は、人類が異星からの影響で滅亡した後の世界。ポストアポカリプス系の4Xストラテジーとして、荒廃した地球を舞台に展開されます。 ゲームの焦点は戦闘にあり、すべての勢力が力で支配を目指す、まさに「大戦略」といえる内容です。 プレイヤーは、人類勢力、サイボーグ化した新たな人類勢力、異星の力を取り込んだ勢力など、計7つの勢力から1つを選び、地球の覇権を争います。 軍事力を駆使して他勢力を排除することが基本目標です。侵略や外交を通じて、自勢力の優位を築く戦略が求められます。 特徴的なのは、4Xゲームとしては珍しい「監視」行動が戦闘システムに組み込まれている点です。これにより、敵のターン中に射程内に入った敵に先制攻撃を仕掛けることが可能です。たとえば、森林地帯にユニットを隠し、待ち伏せ攻撃を行うといった防衛戦術が非常に有効となります。 AIも非常に賢く、勝ち目がないと判断すると戦力を温存し、有利な場面では積極的に攻めてきます。 4Xの戦略要素と戦術シミュレーションが融合した、ユニークなゲーム体験を提供してくれる作品です。 ★★★★★★★ 以下は終盤のネタバレを含む、特に良かった点です。 勝利条件は「同盟国以外の全勢力を滅ぼすこと」という、やや単調に思える内容ではありますが、大乱闘のような世界大戦イベントが発生し、非常に盛り上がります。このイベントは、戦略ゲーム特有の「形勢が確定した後のダレる時間」を巧みに回避しており、エンディングに向けたカタルシスがしっかりと感じられる構成が素晴らしいと感じました。 一方で、悪い点として挙げられるのは、途中で優勢な派閥に乗り換えられる仕様です。これにより、勝利達成の価値がやや薄れてしまう印象があります。 もし勝利条件に独自性や厳しさが加われば、達成感がさらに高まるのではないかと感じました。 また、この仕組みは、ゲーム勝利そのものよりも、マルチエンディングによる多様な物語体験を重視する方向性に向けられると、より魅力的になると思います。他のファンタジーやSF系タイトルにも応用することで、幅広いプレイヤー層を惹きつける可能性があると感じました。 『ZEPHON』は、戦略ゲームの新しい形を示す一作と言えると思います。 今後の進化に大いに期待したい作品です。
Game of the Year 2024
スコール さん
ゼンレスゾーンゼロ
キャラクターデザインと凝ったアニメーション、バトルのパリィ、回避の強さのバランスがいい
Game of the Year 2024
オツベルくん🕊️ さん
メタファー:リファンタジオ
文字通り王道を往く…ゲームです。 ※ネタバレを含む可能性があるので、注意して読み進めてください。 【10/10】 【一言で】いやいい意味でアトラスさんはやってくれましたよ、マジで。 【詳細】 いやこのゲームからはペルソナ5以来の衝撃を受けたし、2021のYour GOTYの時にも書いたけど、AAAのRPGの求められるクオリティがさらに一段上がったんだなと思わざるを得なかったです。 まず世界観がいい。ストーリー冒頭で王の魔法なるものが発動して、この世を縛るルールが発動しちゃうんだけど、非常にハイファンタジーっぽくてワクワクが止まらなかった。王の魔法っていうのは、簡単に言えば王国で選挙をしよう!ということなんだけど、候補者の人気の可視化や上位候補者は暗殺されない(暗殺を試みたものは問答無用で死ぬ)という超絶な効果もあって、まさにファンタジーの魔法といった趣。この辺は、じゃあお金で票を買収すればいいやんとか、上位候補者皆殺しにすればええやん、とかの邪道をことごとくつぶしているのも巧妙。 旅しながら展開していくストーリーもいいんですよね、これが。やっぱRPGは旅しなきゃ。新しいところに行って、そこでイベントがあって、仲間が増える!王道ですよね、王の魔法。 で、やっぱりオープニングのアニメでルイが出てくるわけじゃないですか。「あ、こいつ悪役だな」と誰もが思う。それでラスボスもちゃんとこのルイなんです。そうこの話、ルイのポジションがぶれない。同情の余地が生まれてきても、やっぱり最後まで過激な思想を持った暴君なわけです。そこがいい。 戦闘については、まあ女神転生といえばそれでおしまいなんだけども、個人的には女神転生3リマスター版以来のプレスアイコンシステムだったので、それは結構楽しめた。あと、ラスボスがやたら強かった…近年のゲームの中であれだけ難しいのは結構珍しい。個人的なことを言うと、結局タルンダとかランダマイザは強いです。バフよりデバフなんじゃい!スナイパーの破砕撃ちもお手軽高火力で大好き。初見はジンテーゼ全然強さに気づけなかったので、そこはもっと誘導ほしかったかも。 あと音楽ね!これね、もう神(語彙力低下)。ボーカルの人が現役僧侶という納得感の強い歌で、常にプレイを前に進められました。 このゲームにおけるBGMって、ガリカという妖精がかけてくれる魔法の作用で主人公だけが聞こえるという設定なんだけど、ガリカがね、めっちゃいいこと言うんですよ。「音楽は原初の魔法」。めっちゃエモくないですか?だって原始人たちだって言葉というメディアが未発達だった時から、手をたたいて、足を踏み鳴らして、歌を歌ってたに違いないんですよ。音楽に何度も命を救われてきた身からしたら、本当に共感できるセリフです。そう、音楽ってね、魔法なんです。 【まとめ】 このゲームは100人遊んだら、100人が神ゲー認定する自信があります。とにかく遊んでみてください。50時間以上かけて遊ぶ価値は絶対にあります。
Game of the Year 2024
ヂャンヂャン さん
Core Keeper
簡単に言ってしまえば、マイクラライクな2Dサンドボックスゲーム。テラリアが横スクロールならコアキーパーはその俯瞰視点バージョン。上下軸が存在せず、360℃に広がるオープンワールド。マイクラ、テラリアが地面を掘るなら、コアキーパーは壁を掘る。そんな感じでしょうか。クラフトゲー好きであればだれもが触れてきたであろうマイクラとテラリアこの2大巨塔を差し置いてアーリーアクセス時から注目されるコアキーパーとは!   主人公はある日、石碑のようなものに触れたことをきっかけに突然異世界に飛ばされます。そこは真っ暗闇の世界。何の説明もなくプレイアブルとなったキャラクターを操作して手探りで周辺を確認しつつ、殴るアクションでオブジェクトを破壊し、ドロップしたアイテムを入手します。手に入れたものを確認するためにインベントリを開くと、何やらクラフトができることを発見。どうやら木材だったらしき先ほど入手した素材から松明を作成し、周囲を照らしながら壁を掘り進めるところから冒険が始まります。 終始説明はほぼありません。喋ってくれるNPCもいません。孤独の中、手探りでこの未知なる異世界を生き抜くサバイバルが始まります。クラフトやできることなどは、大体前述したマイクラやテラリア、スターデューバレーなどとほぼ同じですが、操作性の良さやUIの分かりやすさから、未経験者でも何をすればいいのかわからない。どうやればいいのかわからないといった状況には陥りにくく、説明やチュートリアルを排除した代わりに、上手くプレイヤーを誘導させる造りになっています。 掘れば掘るほどに、作れば作るほどに新しい発見と果てしない種類のアイテム、モンスターとの出会いが止め時を失い、あっという間に私はこのゲームの虜になっていました。 破壊可能なオブジェクトは攻撃を加えることでドット絵の揺れと音で知らせてくれたり、生い茂る草は通過するプレイヤーの動きに合わせてザワザワと揺らぎ、地底世界に時折存在する陽光が降り注ぐ場所では木々や草花、池が照らされて美しく輝き、光の当たらない影は深い闇によって恐怖心を煽り、冒険心をくすぐる細かな美術センスや空気感を引き立てるBGMは、デフォルメされた2Dドット絵であるにもかかわらず不思議とその世界にリアリティを感じさせてくれます。 フィールドは360℃ほぼ無限に広がります。そこは恐らくマイクラ同様、マップの自動生成で広がる仕組みだと思われます。ただし、序盤は制限がかかっており一定より外の世界へはいけないようになっていて、いわゆるゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのようなチュートリアルをクリアして世界が広がるようなイメージです。掘り進めるほどに出会える様々なバイオーム。そんな中に見え隠れする巨大なボスの影。集落を築き主人公を襲う謎の亜人達。遺跡に隠されたこの世界の秘密。限られたテキストを頼りに未知なる暗黒世界をクラフトした装備品や道具の数々を駆使して冒険します。 私は今回のレビューではあえてゲーム内容のシステム的な部分には触れませんでした。それは、これからプレイする方に極力ゼロ情報から始めて欲しいと思ったからです。本音を言えばこのレビューすら読んで欲しくないくらいです。自ら発見する楽しみ方こそこのゲームの醍醐味だと私は思います。 最後に、1000円ほどのセールで購入したこのタイトルを、抱き合わせで購入した5000円のゲームそっちのけで100時間以上楽しんでいます。当然ではありますが、ゲームの面白さは値段ではないなと改めて痛感しました。まだまだ終わりは見えません。
Game of the Year 2024
ヒロ@ライトゲーマー さん
Outer Wilds
Outer Wildsは2020年6月にリリースされた、オープンワールドのSFアドベンチャーです。プレイヤーはOuter Wilds Venturesの新米宇宙飛行士として、20分でタイムループする恒星系を調査する任務に採用されます。その中で先輩達の足跡を追って話を聞き、古代エイリアンであるnomaiの記録を読み解くことで、この恒星系に何が起こっているのかに迫っていく…というのがこのゲームの大まかなアウトラインです。 独創性が非常に高く、クリアに至るまで全編を通して試行錯誤、考察を繰り返すことが求められます。ですので、謎解きや考察が好きであったり、探索すること自体を楽しめる方にはぜひプレイしてもらいたい、唯一無二の体験ができるゲームです。 さて、Outer Wildsの魅力を語るにあたってまず伝えておきたいのは、このゲームが決して万人受けするゲームではないということです。 ゲームを始めたばかりのころ、操作に慣れないうちは何度も不慮の事故に遭います。無重力空間では思ったようにコントロールできないことが多く、見えている危険地帯にうっかり突っ込んだり、勢いよく地面に激突したり、はたまた探査船で飛び立ったとたん太陽にダイブしたり……ちょっとしたことで簡単にリスタートとなる設計に心が折れてしまうプレイヤーもいるでしょう。 また、特に序盤においてのガイドが十分ではない点もハードルを高くしています。おそらくOuter Wildsのことを素晴らしいゲームだと評価する人でさえも、「始めの数時間は何をすればいいのか、何を楽しめばいいのかもよくわからなかった」ということが多いのではないでしょうか。 具体的に説明していきます。 ゲームをスタートさせると、プレイヤーは焚き火の前にいます。何の説明もありませんが、とりあえずNPCとの会話で、どうやら今日は自分が宇宙飛行士として飛び立つ日らしいことがわかります。周囲を探索してなんとか探査船で飛び立つものの、探索の指針らしきものは明確に提示されていません。手近な星を調べても断片的な情報が手に入るばかり。そして明確な指針もないまま他の星々の探索を続けますが、なかなか目的や全体像が把握できません。 このように、本作では「どこへ行って何をするか」が終始プレイヤーの手に委ねられています。非常に自由度が高い一方、ある程度進行するまでその魅力を理解しにくくなっています。 私も始めの4時間ぐらいはこのゲームの本質的な面白さを全く理解できないで「無重力空間での動作が妙にリアリティあるな!難しいけど動かしてて楽しいぞ!」ぐらいしか考えていませんでした。 しかし、これらのとっつきにくさは本作の『主人公=プレイヤー』という仕様と自由なプレイングを重視した結果、遊びやすさとトレードオフとなって現れてしまったものだと思います。 本作においてプレイヤーは新米飛行士として宇宙を調査する任務に採用されています。当然探査船の操作にはまだ不慣れで、宇宙はまだまだわからないことだらけ。Outer Wilds Venturesの先輩たちも伝えるべき情報はわずかしか持っていません。 これでは「まずあそこに行ってこれをしましょう」といった指示は出しようがないわけで、プレイヤーが自分で立てた指針に沿って探索を行うことになります。つまり、あの星はどんなところで何があるんだろう、この恒星系に何が起こったんだろう、という好奇心や探究心がゲームプレイの原動力になるわけです。 もちろん、ゲーム的に丁寧なガイドを作ることは可能でしょう。しかしそれは不自然さを感じさせ、ゲーム特有のご都合主義を浮き彫りにしてしまいます。 そう考えると、操作が難しいこともガイドが不親切なことも、新米飛行士の置かれた状況をリアリティをもって描くためにあえてそのように作られたのだ、と個人的にはそう感じました。 一方で、中盤あたりからの探索と発見、そして気付きから次の探索へと連鎖する途切れることない濃密なプレイ体験は、やめ時を見失って睡眠時間を圧迫すること請け合いです。 本作は探索がプレイの中心でありながらインベントリの概念がありません。持ち物はフラッシュライトと音を探知するシグナルスコープ、そしてnomaiの翻訳機だけです。何かを持ち運ぶことはありますが、アイテムとして手に入れることはありません。 では探索して得られるのは何か?それは「情報」です。 何度もループ繰り返しながらプレイヤー自身がこの宇宙に関する知識を積み増していきます。主人公は何も考えても思いついてもくれません。考えるのはプレイヤーの仕事です。様々な星の遺跡、墜落したシャトル、Outer Wilds Venturesのメンバーから得られる細切れの情報。それらを組み合わせることで、過去に起こったことを推察し、現地へ赴いて確認、あるいは実証し、そして新たな情報を知り、別の気づきが起こる。このようなサイクルが、先述した「好奇心がプレイの原動力である」という点と強く噛み合って、加速度的にプレイヤーを作品世界にのめり込ませていきます。 こうして20分という短いループから辞めるタイミングを見失った多くのプレイヤーの睡眠時間を圧迫しながら、物語は予想もしなかった結末にたどり着きます。 さて、ここでもう一つ、本作で一貫して描かれている重要なことに触れておきたいと思います。 それは宇宙を含む自然に対して人ができることはごく限られたことに過ぎないということです。 本作に登場する星々は非常に特徴的で、それぞれが主人公の属する種族にとってもnomaiにとっても過酷な自然環境を備えています。巨大な竜巻に探査船が巻き込まれて宇宙空間に放り出されたり、隕石で地表が崩れたり、砂に埋もれて押しつぶされることもあります。このような自然現象に対して主人公ができることはありません。ただただ翻弄されるのみです。いうまでもなく太陽の熱や強大な重力、ブラックホールにはなす術もありません。 そこには自然や宇宙への畏敬の念が表れていて、これもまた本作に通底するテーマだといえるでしょう。 この過酷な宇宙で、主人公にできることはわずかしかありません。それでも何度もループしながら宇宙の謎に挑み続けたその姿勢、そしてついにたどり着いた結末は、届くはずもないと諦めずに手を伸ばし続けることで得られるものがあると教えてくれるのではないでしょうか。 繰り返しますが、本作は誰にでもオススメできるゲームではありません。発売から時間も経っており、新作ゲームに比べればグラフィックが非常に美麗とも言えません。また、強い信念に貫かれたゲームデザインによって非常に尖った作品になっています。しかし、だからこそ他のゲームにはないプレイ体験をもたらしてくれる。そんな唯一無二のゲームがOuter Wildsである。そう思います。 もし、このレビューを読むことで興味を持っていただけたなら、(少し覚悟を持って)一度プレイしてもらえれば嬉しく思います。
Game of the Year 2024
昼行灯 さん
メタファー:リファンタジオ
ロールプレイングゲーム(RPG)という言葉はすでに多くの人が知っているゲーム用語だと思います。その意味は役割を演じる、今ではテーブルトーク(T)RPGと言われるオリジンの通り、プレイヤーが様々な役職を演じることで成立するゲームでした。 これがコンピューターRPG、特にJRPGと言われる日本のRPGになると、どうしても役割というより、キャラクターを操作したりレベルアップすることが中心になり、本来の役割を演じるという部分が薄れてきてしまいます。 そこでMY GOTYである「メタファー:リファンタジオ」なのですが、本作では冒頭、ゲームの方からプレイヤーに呼びかけ、名前を聞いてきます。ここは是非本名を入力することをおすすめしたいです。 そしてしばらくしてから、メインビジュアルの中心にいる中性的な少年の名前を入力することになります。 つまり本作ではプレイヤー=ゲーム上の主人公ではなく、プレイヤーの役割は主人公を通してこの世界に介入することが明示されます。 こういうタイプのゲームはガンパレード・マーチや最近だとパラノマサイトなどにも見られましたが、本作の面白い点は、プレイヤーにとってのファンタジー世界はゲーム内の世界である一方、主人公たちにとってのファンタジー世界は、私達が今いる現実世界である点です。 そう考えると、今までの延長じゃないかと言われる、メタファー世界の魔法や用語が過去のペルソナやメガテン、世界樹の迷宮の流用であることも、プレイヤーが認識できる形で翻案された結果と捉えることもでき、現実世界からファンタジー世界へ介入している感覚がより深まっていく気がしました。 この姿勢は本当に最後の最後まで貫かれており、特に終盤の展開には、プレイヤーとして胸が熱くなる部分も多々ありました。 プレイヤーはあくまで現実に居る私達で、画面の中のキャラクターを導く役割を与えられている、というのはなかなか良い発明だと思っていて、これでプレイヤーの性別を問わず、キャラメイクをすることなく本来の意味でのRPGを楽しむことが出来るのです。勿論細かいカスタマイズで自分の分身を作り、多岐にわたる選択肢を選ぶことで展開が幾通りにも分岐するバルダーズ・ゲート3のようなゲームはTRPG的ではありますが、それ以外のRPG的手法がこういう世界規模に注目されるJRPGで示されたことにとても意義があると思いました。 手法のみならず、ストーリーは二転三転して最後まで飽きさせず、システムは従来のアトラスRPGの集大成でレスポンスも非常に快適と、ゲームとして隙のない出来でした。 完全版出るまで~とか、ペルソナじゃないから~とか言わず、是非今飛び込んでほしい作品だと思います。
Game of the Year 2024
らくと さん
ステラ―ブレイド
近年、ゲームの規制というものは昔に比べ厳しいものとなっている。 『仕方ないのかなぁ』と納得せざるおえないものもあれば、『なんでやねん』と叫びたくなる様なものまであり、直近で言えば性別の呼び方やセクシーな衣装のインナー装備等。 とても悲しい事ばかりである。 そんな世の中で、私はこのステラーブレイドを推したい。一部界隈からの反感を喰らいながらも、製作者の癖(へき)とこだわりを詰め込んだ作品である。 ゲームジャンルとしては、アクションゲーム。 エリア分けされたフィールドを歩きながら、敵を倒して進んでいく、少しライトな死にゲーとも言えるだろうか。 パリィ(タイミングを合わせてガード)がとても大事で、少し難しくはあるが、ライトユーザーでも楽しめる様に低難易度モードも用意されている。 いつでも難易度設定は変更可能なので、自身に合った難易度を選んで欲しい。 ただ、そういう所よりも、本作は製作者の癖を詰め込んだ主人公、イヴの魅力である。 テカテカのボディースーツ姿がメインだが、好みによって眼鏡、髪型の変更、服装も勿論変える事が出来る。 服装の種類は多く、コラボ衣装もある。 それらはゲーム本編で入手可能であり、追加でもあるコラボ衣装も無料(2024年12月5日現在)である。 自身の好みに合わせて、イヴを彩り、戦い抜いて欲しい。 こういう、製作者のこだわりを現代でも押し通し、発表する作品は大好物である。 えっちなお姉さんは好きですか?ウン、ダイスキサ! こういうゲームには、好き嫌いはあろうが、こういうゲームを問題無く出せなくなってはならないとも思う。 なので皆様も、1度このゲームに触れてみて、確かめて欲しい。
Game of the Year 2024
ケンケンまる さん
北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ 〜追憶の流氷・涙のニポポ人形〜
クリアまでかかった時間はわずか7時間… 本作は1984年にパソコン版が発売され、1987年にファミコン版の登場で有名になった堀井雄二さんがドラクエ以前に手がけたアドベンチャーゲームのリメイク作品です。 総当たりでクリアが容易なコマンド選択式アドベンチャーゲームは昨今では新作も少なくなりましたが8ビットPC時代は主力ジャンルの1つでした。 わずか数時間でクリア=終わってしまうゲームをなぜ2024年のNo.1に選ぶのか? それはこのゲームの原作が発売された昭和とリメイク版が発売された令和を繋ぐ時間経過をも演出に使う、稀有な作品だったからです。 長くなりますがこのゲームにまつわる昭和から令和に続く旅路にお付き合い頂ければ…と思います。 私が初めて遊んだのはMSX版でした。発売は1985年10月なのでファミコン版より2年近く前になります。 遊んだ当時、私は小学校6年生でした。 MSX版のメディアはカセットテープでデータレコーダーのピー、ガガガーという読み込み音が懐かしいです😅 ゲーム業界が今ほど大きくなく、でも夢があった古き良き昭和の時代…^_^ MSX版はグラフィックも荒井清和先生が参加される前なのですが後のファミコン版の大ヒットで脳内のイメージは完全に荒井先生の絵にアップデートされました。 ※ここから先はゲーム冒頭部分のネタバレ要素が含まれます。 公式HPで明かされている要素のみですが真っさらな状態でプレイしたい方は読むのをお控え下さい。 リメイク版は2024年現代から当時を振り返る形で物語が始まります。 主人公であるボスこと「あなた」は1987年のオホーツク連鎖殺人事件を相棒の猿渡俊介こと「シュン」と共に解決に導いた刑事。 そんなボスも2024年現在は定年退職を間近に控え、有給消化をする立場。 そんなボスの元に1人の女子大生が訪ねてきます。 彼女の名前は「猿渡まりな」。 1987年のオホーツク連鎖殺人事件を共に解決したあの「シュン」の娘だと言うのです! まりなはボスに父のシュンが何らかの事件に巻き込まれてしまったこと、そして奇妙なことにかつて事件で重要な手がかりであったニポポ人形が消失していたことを告げます。 この出来事が、かつてボスとシュンが解決した37年前の「オホーツク事件」と深い関わりがあるのではないかと考えた二人は共に協力し、謎を解き明かすべく、北海道・釧路へと向かうことを決意します!舞台はふたたび北海道へ! 俊介を襲った犯人、消えたニポポ人形の謎、そして再び蘇る1987年の「オホーツク事件」… 北海道へ向かう列車の中でボスがまりなに語る1987年のオホーツク連鎖殺人事件…リメイク版はこういう形で物語が始まります。 そして無事に1987年パートをクリアすると列車は北海道は釧路へ到着、2024年パートがスタートします! 2024年現在から始まり、かつての相棒「シュン」の娘である「まりな」と共に列車で東京から北海道に向かう道中で1987年の事件を振り返るこの導入が本当に素晴らしく、趣深いのです!😆 それは何故か? 青函トンネル開通は1988年…私がMSXでプレイした1985年はもちろん、ファミコン版が発売された1987年当時も列車で北海道に行く事は出来ませんでした。 私はMSXでオホーツク〜を遊んだ翌年の1986年夏、北海道に引っ越した友達に会いに、行きは飛行機で、帰りは「青春18きっぷ」を使いながら札幌から千葉の実家まで旅をしました。 当時中学1年生だったのですがこの時、函館から青森の移動手段は列車ではなく青函連絡船でした。 1985年にゲームを遊んだ時は気が付かなかったのですが1986年の北海道旅行で改めて感じたのが北海道の広大さ! 鈍行列車を乗り継ぎながらの帰宅で札幌から函館まで当時、約半日かかったのが驚きでした! 37年の月日を経て今では東京から釧路まで列車で行ける…本当に感慨深いです😆 様々な謎を解き明かし、エンディングを迎えると流れる主題歌…ここでも1つの奇跡があります。 中川翔子さんが歌う主題歌「流氷に消ゆキラリ」は堀井雄二さんの作詞家デビュー作なんです! ちなみに作曲はヒャダインさんが担当されています。 パッケージ版の特典にも触れておこうと思います。 パッケージ版には37年前のファミコン版が特典として付属されます。 これ、とても良い試みだと思いました。 ファミコン誕生から既に41年が過ぎていて昔のゲームのリメイクは遊べてもその原典を遊べないのはいかがなものか?と思います。 ビジネスとして成立しにくいのかもしれませんが今回のようにリメイク版のオマケとして付けるなら進化を比較する事も出来ると思います。 老舗ゲーム会社さんはそろそろ自社が作ってきた過去作を「そのまま残す」アーカイブ化について真剣に考えてほしいです。 特にリメイクを比較的頻繁にやっているドラクエやFFは重く受け止めてほしいと思ってます。 「オホーツクに消ゆ」リメイク版に話を戻して… クリアまでかかった時間はわずか7時間…でもひと昔前のゲームって長く遊ぶ事より、どれだけ充実したゲーム体験が出来たか?だったと思うんです。 そういう意味では本作は「ゲームの楽しさの原点」を垣間見た気がします。 …とここまで書いて一部の方は「あれ?お前、昨年のYour GOTYでティアキン500時間以上遊んでカバンダさん探しに行く!とかレビュー書いて番組賞もらっていなかった?」と感じている事でしょう😅 はい、書きましたし番組賞ももらいました😅 全く一貫性が無い事を認めた上で私たちがゲームに向き合える時間、いわゆる「可処分時間」は限られています。 それらを認めた上で短い時間で満足度が得られる本作はティアキンとはまた別の魅力が詰まっていると感じている次第です😅 本作は昭和と令和を繋ぎながら単なるリメイクにとどまらず、2024年を舞台にした新しい物語も用意されています。 37年の時間経過をも物語の味付けに使う、稀有な作品だと思います。 最後は色々込み上げて涙腺大決壊でした😅 私にとって間違いなく本年No.1作品です!