ゲームクリア直後に私のYOUR GOTY 2024は『黒神話:悟空』で決まっていた。にも関わらず昨年の内にレビュー投稿をしなかったのはなぜかと言えば…
発売後まもなく売上1000万本を超え、イギリスのゴールデンジョイスティックアワードで大賞を取るほどの大ヒットを記録した本作。
それ故に、YOUR GOTYのレビュー数も相当な物になり、私の拙いレビューなど箸にも棒にも掛からぬ…と思い込んでいたから…。
しかし、年が明けてYOUR GOTYのページを訪れてみるとどうだ、レビューが1件も無いではないか!
「はっ?」
正直驚いてしまった。
日本のゲーム系ポッドキャスト界隈で本作はほとんど注目されていないのか?
そう言えば、2024年末の「ゲームなんとか」でパーソナリティの御三人も
「なんか評判らしいねぇ」
となんだか薄い反応をされていた記憶が…。
どうやら日本において本作は、1970年代の「西遊記ブーム」を知っている世代中心に遊ばれていたと言う仮説が成り立つ様な気がする。
数式で表すとこう、
日本の『黒神話:悟空』ファン≒後期中年層
なんだか悲しくなってきてしまったが、メソメソしていても仕方ない。
このゲームに興味をそそられなかった面々に本作の魅力を今更ながらお伝えするしかなかろう。と、言う事でレビューをしていきまする。
本作は、中国の古典ファンタジー「西遊記」を題材にしたゲーム。
「西遊記」をざっくり説明すると、
「エライお坊さんと3体の妖怪で構成されるパーティが、ありがたい経典を貰いに行くために現在の中国からインド目指して旅する道中のすったもんだの物語」
であり、特に悪い妖怪たちを倒す戦士役の 孫悟空がとても目立つんですね。
中国はもちろん日本、あとイギリスでも孫悟空の人気は高い様で、中国のデベロッパーが戦闘中心のアクションゲームを作るなら絶対に外せないキャラな訳です。
で・す・が!!
実は本作の主人公は実は孫悟空ではないと言うのが少しややこしいところ。
あくまで我々が操作するのは、孫悟空の子孫一族の中の血気盛んな若者の一人で、その若者は御先祖様 孫悟空の足跡を辿りながら、彼をもう一度この世に復活させるための旅に出るのです。
ゲームの概略はここまでとして本編について語りましょう。
まず、目を奪われるのがグラフィックの素晴らしさですね。
解像度がどうのこうのと言った数字で語れる部分だけではなく、絵としてのクオリティがとんでもないのです。つまり、色使いや構図。奥行き感や陰影と言ったアート的部分が他のゲームを圧倒している様に思います。この世界の中を走り回るのがとても楽しい♪
さらに、音楽についても語っておかねばなりません。
中国の雰囲気が存分に味わえる楽曲には我々も否応なしに心が惹かれるはずです。特に第二章のオープニングで登場する強烈なビジュアルをした男が弦楽器一つで弾き語りする曲がとにもかくにも圧巻で、これだけで「このゲーム買って良かったぁ」と思わされました。
アジア人で良かったなぁ、と心底感じる事が出来ます。
戦闘面に話を移しましょう。
私的には死にゲーと言っても良い位に難易度が高い印象でした。
戦闘のスピード感はソウル系やエルデンリングよりもだいぶ早く、且つリズム感を試される場面が多い様に思います。難しい反面、アクションは派手で、特に特殊技が決まった時の脳汁出まくり爽快感は特筆すべき物があると思いますね。一言で言うと戦闘が楽しい。
このゲームの特色として、一つの章をクリアすると必ずショートムービーが挟まる事も挙げておかねばなりませんね。これらは「西遊記」に書かれているエピソードを題材にした物になっています。
このショートムービーを「気持ち悪い」「怖い」と評する人が偶にいますが、とんでもない事です。
もしかすると、人生の半分を過ぎてしまった私の様な後期中年だから理解出来るのかも知れませんが、どれもこれも短い中に人生の悲哀が詰め込まれた良作ばかり。ムービー毎に絵のタッチが全く違うのもプレイヤーを飽きさせないナイスポイントです。私、このムービー部分だけ今でもたまに見て涙したりしています。
最後に私が本作で最も評価している点を挙げますね。
それはずばり、キャラクターデザインなんです。
皆さんもご存じの通り欧米のゲームからは美男美女が徹底的に排除され、当たり障りのない凡庸な顔のキャラクターばかり。
無論、それが悪いとは申しませんが、やはりプレイヤーの気持ちを躍らせる力が足りない事は否めませんよね。少なくとも私はそうです。
その点、本作は全く逆のアプローチをしております。
それを端的に申し上げると、
「兄ちゃんも姉ちゃんも顔が奇麗!神!」
と言う事。
欧米とは違う価値観でゲームを作っているんだ!と言うデベロッパーさんの主張にも思えます。何より、やはりキャラに思い入れが出来るのは単純に楽しいですよ、マジで。
ちなみに私は4姉妹の四女が好き。
纏めます。
モバイルゲーム専門なのかと思われていた中国のデベロッパーから、これだけの大作が発売され、バカ売れし、中国共産党のゲームに対する政策にまで影響を及ぼしたと言う事実。
本作の持つ価値は実はそこにあるのかも知れません。
実社会では明らかにナショナリズムが台頭している中、せめてゲームの世界においては中国発のゲームが今後も存在感を滲ませ、欧米や日本のメーカーと共に多様な価値観を創出して貰えると良いなぁ。
そんな事を考えつつレビューを書いてみました。
それではさようなら。