昨今のゲームを評価する際に、"オリジナリティ"はあるのか、無いのかという点が争点になることが多いと個人的には感じている。今年でファミコン誕生からちょうど40年。決して短いとは言えない歴史の中で、数多のゲームが誕生し、その中には"オリジナリティ"を持った作品も数多くある。しかし、2023年という時代において、真の"オリジナリティ"は存在し得るのか。無いとはいえないだろうが、やはり先行する作品からの影響というのは大きく、プレイヤーが遊ぶ作品を選ぶ際、既存のタイトルから経験したことがあるようなものを探してしまうし、未プレイの人に説明する際、「アレに似ている」、「あの作品に近い」などとわかりやすく説明しようとすればするほど、過去の作品との比較をするものだ。しかし、既存のゲームシステムの融合により、"オリジナリティ"は生まれるものでもあるということに気付かされた年であった。私の2023年GOTYは、「Hi-Fi RUSH」である。

本作の開発は、Tango Gameworksで、販売はBethesda Softworksから、XboxとPCでの発売となった。発表と同時に発売、Day1ゲームパスということもあり、リリース時から大きな話題になったのは読者の記憶にも新しいだろう。しかし、この手法だけで話題になったのではなく、このゲームはその"オリジナリティ"こそ、注目されたのだ。既存のスラッシュアクションにリズムゲームをブレンドするという点が本作の特徴である。どのようなゲームかを説明する際、非常に雑に語るとすれば、Devil May Cry×リズム天国となり、誰もブレンドしようとしなかったゲーム性こそが、本作の持つ最大の"オリジナリティ"である。

私がゲームを評価する際の基準としている項目が、4〜5点ある。1、ゲームプレイ。2、ビジュアル。3、音響、音楽。4、"オリジナリティ"。5、ストーリーがあれば、ストーリーとなる。

まず、1点目のゲームプレイに関して、見ていこう。ゲーム画面だけを見るならば、本作は3Dアクションゲームにしか見えない。だが、画面上に存在するもの、敵や背景、その全てがリズムを刻んでおり、そのリズムと攻撃や回避を同期させることで、コンボを成立させるというゲーム性を生み出している。文章や映像からでは伝わらないが、触っていて、動かしていて気持ちいいのである。手触りが良いアクションをリズムにノリながら繰り出していく、コンボの種類も豊富で操作して楽しいゲームだった。では、本作はリズム感が無ければ、楽しめないのかというとそんなことはない。まず、私が音感、リズム感ともに無いのだが、本作を楽しんで最後までプレイ出来たのが、何よりの証左である。リズムを無視して力技で押し切ることが出来るゲーム性も持っており、単純なアクションゲームとして楽しむことも可能である。アクションゲームの本質は、動かして楽しい、何よりもこの点に尽きるのではないだろうか。本作は正にそのような作品であった。

続いて、ビジュアル面はどうかというと。以前ほど、フォトリアルな画面が持て囃される時代ではないが、やはりビジュアル面を評価される作品は写実的なものが多い。しかし、本作は一見して分かるのだか、非常にポップでキャッチーなビジュアルである。最近のゲーム画面は暗く、見難いものが多いのだが、本作は徹底してポップである。アメコミ風のデザインだけでなく、某少年漫画のパロディを取り入れるなど遊び心もふんだんにある。その匙加減が絶妙である。この絵柄は、背景もリズムを刻むという本作に於いて、非常に素晴らしい役割を果たしており、ゲームプレイにも一役買っている。

本作の最大の特徴とも言えるのが、音楽である。リズムゲーム要素がふんだんに含まれる作品において、手の抜けない分野であることは間違いないのだか、オリジナル曲が素晴らしいのは勿論、採用されているライセンス曲のバラエティも素晴らしい。NINやThe Prodigy、Number Girlなど90年代オルタナティブロックファンには堪らない選曲であった。また本作では、ストリーマー向けにライセンス曲をオリジナル曲へ差し替えるモードがあるのだか、そのオリジナル曲がまた素晴らしい。原曲の特徴をよく捉えており、それぞれのバンドに対して、製作陣の愛情と敬意を感じられた。

一方でストーリーはというと、何かを考えさせられる、驚きの展開の連続というような、話の内容に軸足を置いたようなものではない。ご都合主義の連続であるのだが、主人公のその一本筋の通った真っ直ぐさで、プレイしながらプレイヤーが引っ張られていく、愛すべきバカによる王道の勧善懲悪である。変に子供っぽ過ぎず、大人びた話でもなく、全体的にさっぱりとした味付けになっており、万人が楽しめるような物語である。本作に於いて、ストーリーはゲームをプレイするための添え物であり、決して作品の核となる要素ではないので、ストーリー主体のゲームが好みな方にはオススメ出来ないだろう。

最後に"オリジナリティ"はというと、本作は"オリジナリティ"の塊である。一見、何の変哲もないスラッシュアクションにリズムゲーム要素をブレンドしたことによって体験出来るゲーム性は唯一無二なものである。既存の作品のメカニクスを組み合わせることにより、ここまで触れたこともない作品を生み出したことは感嘆せざるを得ない。各項目を分解すれば、"オリジナリティ"があるわけではないのだが、美しい足し算がこれまで体験したことのないゲームプレイを生み出している。

以上、その評価軸の全てに於いて高評価が出来る故に、2023年の私のGOTYとしたいと思う。

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FINAL FANTASY ⅩⅥは、ここ数作のFFナンバリング作と比べて、何が特徴的だったのかを考えながらプレイしていた。おそらく、その世界設定、用語がSFC時代のFFに回帰したかのような、単純さがあったのだろう。「FFってこんなんだよ」、「この程度でいいんだよ」という感傷に浸りながらプレイした。
ストーリーが良い、アクションが面白い、映像が綺麗、音楽が素晴らしいなど評価する点はそれぞれ異なるのだろうが、私はその単純なFFらしさこそ、本作を評価するポイントだった。
製作陣の、FFってこんなんだよね?という愛情が詰まった作品。FFらしさとは、千差万別で決して解決出来る問題ではないのだが、各自の中にそれぞれのFFらしさは必ず存在していて、最早好みの問題であろう。
本作のFFらしさは、私の考え得るFFらしさと合致したということだけは間違いない。
これからも初老向けのゲームとして、長く存在して欲しいシリーズである。

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マンネリという評価は、悪いことなのだろうか。私がそのマンネリさに喜びを覚えたのは、アサシンクリード ミラージュである。ACシリーズといえば、かつては毎年のように新作がリリースされ、新規参入のハードルが上がり続け、そのリリースペースからも洋ゲー界の無双とも言われたシリーズである。そのためか、ACオリジンからはRPG要素が全面に押し出され、これまでのシリーズとはゲーム性自体大きく変わってしまった。オデッセイ、ヴァルハラと続いた、ミソロジー3部作は世間的な評価は高かったが、1作目から全作品プレイしている私には、「こんなのACじゃない」となり、ヴァルハラに於いてはいまだに未プレイである。
そんな中、ミラージュは原点回帰を謳いリリースされた古き良きACであった。舞台も中東で、どこか懐かしさすら覚えた。前3作はプレイ時間の長大化も問題として取り上げられており、本作のインスタントなプレイ時間は逆に評価されるべき点でもある。本作は実質的には初代ACのリブート作のような位置付けに近いと感じ、ACなんてこんなんでいいんだよと改めてシリーズが好きだということを再確認させてくれ、中途半端にしていたオデッセイへの扉を再び開いてくれた作品となった。(話は脱線するが、オデッセイはACシリーズとして考えるから、個人的には合わないのであって、アサシンではなく「誉ある戦い」をする戦士のゲームと考えたら、案外悪くなかった。プレイ中に叔父上の声が聞こえるくらいには、ステルスをしないゲームになっている)
メーカーの懐事情を考えると仕方ないと納得するべきところもあるのだろうが、長いシリーズであればあるほど変化に戸惑うファンもいるのだ。長寿シリーズであればこそ、マンネリという評価を褒め言葉として受け取っても良いのではないだろうか。誉あるマンネリで賞に相応しい作品である。

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