プリンス・オブ・ペルシャシリーズ14年ぶりの新作として今年リリースされた「プリンスオブペルシャ 失われた王冠」は、シリーズ初のサイドビュー探索型アクション、俗にいうメトロイドヴァニアとなった。

このジャンルが好きで数多く遊んできたが、本作は戦闘、探索、謎解きといったすべての要素がハイレベルに融合していて屈指の面白さだった。

長年続くシリーズに対してだけでなく、メトロイドヴァニアというジャンルに対しても新たな息吹を吹き込んだと言える本作を私のGOTYとしたい。

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まず本作はシリーズ作品だが過去作との繋がりはないので初めての人でも問題ない。

とは言え探索アクションが苦手だからいいや、というそこのあなた。ちょっと待ってほしい。このゲームは設定項目が充実していて、かなり間口が広くなっている。

難易度は一般的なイージーやノーマルといったものに該当するプリセットの他にカスタム設定が可能で、敵のダメージやHP、環境ダメージ、パリィの難易度等々、スタバの注文より細かく設定が決められる。

例えば敵のダメージはプリセットだと最低0.5、最高2.0だが、カスタム設定すると0.1から6.0まで0.1ポイント刻みの調整ができる。最高でも物足りないというへんた……猛者は、一度死んだら終わりのパーマデスモードで絶望を味わってほしい。

他にも目的地が表示されるガイドモードに、高度なアクションが必要とされる場所をワープでショートカットするというアクションアシストなんてものもあるし、色覚異常に対応したハイコントラストモードもある。これにより様々なニーズに答えやすくなっている。

しかもこれらの設定はゲームの途中でも変更できるので、初心者でもスタバの注文のようにビビる必要はない。やりながら調整してしまえばOKだ。

ちょっと甘やかしすぎではないか?というくらいのホスピタリティだが、良くも悪くも多様性の時代。ゲーマーの多様性ってやつにうまく対応してると言えるだろう。これを作ってる ubisoft がセクハラやらアサクリやらで度々炎上して全然対応できてる感がないのは、また別の話だ。

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ここからはやっと本編の紹介。

ストーリーを簡単に言うと、さらわれた王子を救出しよう、というものだ。謎めいた内容で悪くはなかったが惜しいという印象。最後のピースが欠けているとでも言おうか、もう一声と言いたくなる。なのであえて詳細は省くが、ケレン味のある演出はかっこよくて見ごたえがあり楽しめた。

この作品は映画で言うなら「ジョン・ウィック」だ。ストーリーもいいが、何よりも極上のアクションを堪能してほしい。これは「かっこよくて気持ちいい」ゲームだ。

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メトロイドヴァニアは“探索アクション”であり、戦闘アクションに関しては割とシンプルなことが多い。しかし本作は多彩な攻撃パターンが用意されていて、爽快でスピード感ある戦闘が楽しめる。

攻撃パターンは多いがシンプルなキーの組み合わせだけで簡単にいろんな技が出せる。ポイントはそれをどう繋げるか。そこに加わるエフェクトがまた絶妙でかっこいい。ここまで戦闘が気持ちいいメトロイドヴァニアは初めてだ。

敵の攻撃パターンも様々で、通常の攻撃以外に特殊なものが主に2種類ある。
敵の目が赤く光ったときの攻撃は防御不可。そして黄色く光ったときの攻撃は受け流し(パリィ)をすることで強力な反撃を喰らわすことができる。その際には敵の種類ごとに個別の演出が用意されていて、これがまたかっこいい。

ボス等の強敵ではカメラアングルが切り替わり、ザコシショウばりに誇張したダイナミックな演出はケレン味の極み。私が小学生だったら「くらえー!」と叫んでるに違いない。
演出は小気味よく差し込まれるので、全体のテンポが乱されること無く邪魔に感じることもなかった。

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2段ジャンプや空中ダッシュなどといった探索系の能力も当然いろいろと用意されているが、本作が素晴らしいのはこれらの能力が戦闘や謎解きにもしっかり活用されているところ。

1番面白かったのが途中から使えるようになるワープのような能力。これが秀逸で見事だった。最初はパッとしない能力だなと思ったが、ゲームを進めていくうちに、なるほどそういう活用法があるか、という場面が何度もあって思わず唸った。

これらの多彩なアクションを活用すれば、「こんなの避けるの無理だろ」という強力なボスの攻撃も必ず凌げる。その抜け道を見つけ出しすべてを避け切った時は、気持ちよくておもわず奇声が漏れる。

探索や謎解きもやりごたえ抜群で、特にアップデートで追加された「神の試練」というチャレンジコンテンツは、その名に恥じない高難度。何度トゲに刺さって死んだことか。
それでも何度も挑戦してしまうのは、やはり抜群の操作感とアクションの気持ちよさが大きいと思う。

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とにかくプレイヤーの操作に対しての反応の良さが感度最高で素晴らしい。しかも動きがいちいちアクロバティックでかっこいいので、キャラクターを動かしてるだけでワクワクしてしまう。プールでやたら回転したり飛び跳ねてる子供がいたら、プリンスオブペルシャをやってるか、スパイダーマンを見た後か、どちらかだろう。

そもそも主人公のサルゴンがかっこいいので見ていて爽快だ。
全盛期の藤岡弘を思わせる濃い男前。上半身ほぼ裸みたいな軽装で、立ち姿は顔が右を向いてるのに体は左に捻っていて「この胸筋を見よ!」とでも言いたげだ。現代人だったらピチピチのタンクトップを好んで着るタイプに違いない。
衣装を変更することもできるが、中にはふんどし一丁みたいな格好もあり特定の需要を満たしてくれるであろう。

登場人物の名前もかっこいい。
サルゴン、ガッサン、アルタバン、アナヒータ、メラノイアス。
ペルシャではポピュラーな名前だったんだろうか。わからないがとりあえず独特の響きが私のツボに刺さりまくって、声に出して言いたくなる。

メラノイアス! 
週1くらいなら「おはようございます」の代わりに言ってもバレないんじゃないだろうか。ぜひ皆さんも試してみてほしい。

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最後に、本作には探索に関して面白い機能が搭載されている。

メトロイドヴァニアといえば、様々な能力を手に入れ行ける場所が増えていくという基本の流れがある。慣れたプレーヤーは、今はあそこのアイテム取れないけど2段ジャンプがあれば取れるようになるな、なんてことを考えながらプレイするわけだ。

そんなときのためにマップにマーカーをつけるという機能が定番としてあるのだが、マーカーをつけたものの、なんのマーカーだったか覚えてない、なんてことが割と発生しがちだ。

じゃぁ忘れないようにスクショ撮っとこうなんてこともするのだが、確認作業がめちゃくちゃめんどくさいし、どれがどこのスクショだったか忘れたりする。
策士策に溺れるというより、猿が猿知恵に翻弄されてるだけで、なんともやりきれない。

しかし本作はゲーム内の機能としてスクショが撮れて、それをマップに記録しておける。これだ!これがやりたかったのだ!こんなの初めて!こんな快感があったなんて!

ということでこの機能を、これがやりたかったオブザイヤーに認定したい。

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ここまで絶賛したが、不満点がないわけではない。

ファストトラベルの拠点が少なく、一発で拠点に戻ることもできないのがちょっと不便だった。先述のようにキャラクターが軽快に動いてくれるので、クリアするだけならそれほど苦ではないが、探索をやり込もうとすると流石に面倒くさく感じることもあった。

でもまぁそれくらいだ。
1番不満に感じてたバグもアップデートで直ってたし、何よりも時間が経って心に残ってるのは圧倒的なゲームプレイの面白さだ。その他の微細な気になった点も多少あるが、この際「済んだことだ、気にするな」とだけ言っておこう。

本作は私のゲームオブザイヤーと、これがやりたかったオブザイヤーの2冠にふさわしい名作である。
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「ANIMAL WELL」は今年発売されたサイドビューの探索型アクション、すなわちメトロイドヴァニアといえるが、戦闘がなくて探索と謎解きに特化した内容になっている。

私のGOTYに選んだ作品と今作と、最後までどちらを選ぶか迷ったくらいの面白さで紛れもなく傑作だ。
これを捨て置くのは忍びないので、本作に準GOTYを贈呈したい。



先述のようにこのゲームには戦闘がないが、もうひとつ重要なものがない。「説明」だ。
このゲームには説明らしい説明が一切ない。

「ANIMAL WELL」。直訳すると「動物の井戸」だろうか。井戸の中のような薄暗い謎の世界が舞台となっているが、ここはどこなのか。説明がない。

とりあえず動物はいろいろ出てくるが、プレイヤーが操作するのは饅頭のようなスライムのような謎の丸い生き物だ。これは一体何なのか。説明がない。

様々なアイテムが登場するが、それをどう使うのか。説明がない。

そもそも何をすればいいのか。説明がない。

ゲーム中に出てくるテキストはアイテムの名前くらい。教育係の先輩が「仕事は見て覚えるもんだ」と言って何も教えてくれないパターンだ。現実世界だったら相当しんどいが、ゲームだとこれが面白い。

「説明がない」とはいえ文章での説明がないだけで、ある程度は見た目のヒントで何となくわかるようにはなっていたりする。でもその加減がさりげなくてうまいので、情報が少ない分あらゆる行動に対して「自分で考えた」という感覚が強く、些細なことであっても心地よい達成感を得られる。

故に、このゲームは余計な情報は知らないままプレイした方がいい。だから内容の紹介はひとまず以上とする。

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操作感が優れてるのもポイントが高い。
謎解きはもちろん、プラットフォームゲームとしてもなかなかの手応えがあるが、饅頭みたいな謎のキャラクターが実にキビキビ動いてくれてストレスは少ない。

レトロな雰囲気のドット絵も魅力的だ。滑らかに動く様子は見ていて気持ちがいいが、静寂の中に動物の声だけが聞こえる薄暗い謎の世界は、そこはかとない恐ろしさを漂わせていて程よい緊張感も味わわせてくれる。
プレイヤーは気がつくと謎深き世界にどっぷり引きずり込まれているだろう。

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探索と謎解きの面白さにやられ夢中になってプレイしたのだが、なぜGOTYに選ばなかったのか。ここからはその話をしたいが、微妙にネタバレかなと思うので気になる人は読まなくていい。

簡潔にまとめると、納得できないことがあったから、ということだ。
それでもこの作品が最高に面白いことには変わりないということだけは間違いない。

詳しくは書かないが、いろんな意味で答えがひとつではないゲームだと思うので、自分なりの答えを探してみてほしい。

ということで、以後は興味ある方だけどうぞ。

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何度も言っているように、このゲームには戦闘がない。なのでラスボスもいない。とりあえずゴールらしきところに到達するとクリアっぽい感じになるのだが、まだこの世界には謎だたくさん残ってることは明らかで、全然クリアした感がない。

情報の少なさ故に心地よい達成感を得ながら夢中でプレイした訳だが、情報の少なさ故に最後の最後で曖昧模糊とした気持ちになってしまったという感じだ。

それなら全ての謎を解いて完全クリアしてやろうじゃないかとなる訳だが、そこで問題があった。

私は基本的にクリアするまでは攻略サイトを見ないのだが、どうしても解けない謎があって、ヒントの手がかりすら掴めなかったので諦めて攻略サイトをのぞいてみた。すると、その謎は絶対に1人では解くことができない仕掛けとなっていた。

例えるなら、ポケモン赤だけ持ってても全てのポケモンは揃いません、緑持ってる人と交換しましょう、みたいな状態だ。
仕掛けとしては面白いかもしれないが、ポケモンのように対戦する訳でもないソロプレイ用のこのゲームで、それをやるのはちょっといただけない。

せっかく誰にも頼らず1人で謎を解くことを楽しんでたのに、それを知ったところで少し冷めてしまった。

というわけで、本作は傑作だとは思うがGOTYではなく準GOTYとした。
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