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Inverted Angel

Game of the Year 2024
あしかわあしか さん
Inverted Angel
【ゲーム全体について】 Inverted Angel(以下、本作)は、噛み砕いて言えば、「知らん女が俺くんの彼女だと名乗ってインターホンを押してきたので、ドア越しに会話しながら相手の正体を探るゲーム」です。骨組みとしては、推理アドベンチャーのカテゴリに属します。  このゲームの最も大きな独自性の一つとして、ゲームの説明文にもある「あなたが入力した推理が"だいたいのニュアンス"で判定される」という点が挙げられます。 これは何かというと、例えば、先行作品のように、選択式ではなく、推理のターンに入ると入力窓が出現して、そこに推理を文章として自由入力でき、自然言語処理AIが文意を判定してくれる、というものです。 解答が選択式のゲームでは、本当に行き詰まったときはセーブ&ロードを駆使して総当たりすることも可能でした。(実際自分も何度かお世話になった) 一方で本作は、自由入力のため、自分でちゃんと答えにたどり着かないと先に進むことができない。 こう聞くとむずかしそうですが、自分の言葉で、自分の意思をゲームに介入させる、というプレイ感自体がとても面白いものですし、 およそ10〜12時間ほどでクリア可能なボリュームと、1000円しない価格からも、もし興味を持たれたら、あまり構えずに気軽にプレイしてみてほしい一作です。 【キャラクター】 本作で立ち絵があるキャラクターは、パッケージにもいる自称彼女の女の子(通称:彼女ちゃん)のみです。 「ゆめかわ系」のような服装で、勝手に彼女だと名乗っている点からも、いわゆる「ヤンデレ」か?と初めは思います。 しかし、会話を続けていくと、その印象は大きく覆るはずです。 『君は、自立と綺麗な対幻想とを両立しようとは思わないんだね』 彼女ちゃんは、哲学的な、難しい問いを幾度となくこちらへ投げかけてきます。 正直、この辺りは人を選ぶポイントではあると思いますが、一度ハマってしまえば、彼女ちゃんとの会話はとても面白い! 最初はもしかしたらくじけそうになるかもしれませんが、ぜひ彼女ちゃんの言葉に辛抱強く耳を傾けてみてください。 彼女ちゃん自身は、あくまで主人公(プレイヤー)との会話を楽しむために、あえてそうした難しい問いかけをしてきています。 こちらも楽しむつもりで挑んでみると、意外と面白いはずです。 【音楽・サウンド】 本作の音楽・BGM等は、全て作者の方が手掛けたものです。 本作は、「夜に、知らない女の人とインターホン越しに会話をする」という場面からほとんど動かないのですが、 それにも関わらず、BGMのおかげで、緊張感が高まったり、緩んだり、あるいはコミカルな雰囲気になったり… まるで場面がコロコロと変わるようで、とにかく飽きさせてくれません。 そして何より、本作の主題歌である『Inverted Angel』は必聴。 よくよく聴くと、実はゲーム中の効果音が曲の中に使われていたりします。ゲームクリア後に、じっくり聴いてみてください。 【シナリオ】 いわゆるマルチエンディング方式であり、ルートや選択によって、彼女ちゃんと主人公の関係性も大きく変わります。 推理ゲームなので、あまり深くは話せませんが、 ・彼女は何者なのか? ・彼女はなぜ、哲学的な問いをこちらへ投げかけてくるのか? これらを考えながら読み進めてみてください。 その方が、彼女との対話の夜も、楽しくなるはずですし、全てを終えたあとに迎える朝焼けは、きっと綺麗なはずです。
Game of the Year 2024
礻モネモ さん
In Stars And Time
「ミスをしたくない、もしもあの時やり直せたら、あの時のあの発言は不愉快だったろうか。そんな思いを少しでも抱いたことがある貴方へ」 舞台は魔王との決戦前夜。苦難を共に乗り越えた仲間たちとも決意を固め、ついに最終決戦が始まる......かと思いきや、自分だけがタイムリープをひたすら繰り返してしまう! 終わらない2日間を繰り返しながら世界を救う活路を見出すコマンドRPG。 この作品で特に衝撃を受けたのは、ゲームだからこそプレイヤーが直に味わえるタイムリープの苦しみです。ジャンケンを属性にした独自の戦略性を持つ戦闘システムはただの単純作業と化し、感動や笑い満ちた仲間との思い出は退屈な茶番劇へと色褪せてしまいます。楽しい冒険劇がどんどんと擦り減っていく苦痛が、タイムリープで疲弊していく主人公シフランの感情とリンクすることで、唯一無二のゲーム体験を得られるタイムループものの大傑作です。 前述した戦闘や仲間とのイベントは十分に面白いものなのですが、恐らくこの作品の核となるのは、それが記憶の中で風化していく悲哀と苦痛を抱えたシフランの巧みな心理描写の素晴らしさにあるのでしょう。そのまま出すだけで十二分に面白いゲーム体験をわざわざ繰り返させ、プレイヤーとシフラン双方にとって絶望のループに満ちた体験に変容させてしまう大胆さは、製作陣のこの作品に対する本気度を感じさせます。 作業と化したバトル、茶番と化した友情劇、苦痛にまみれたループを脱した先には、他では味わえない感動があること間違い無し。 自分はもともとコマンドRPGの作業感が好きな方ですが、今作に限ってはその作業感が苦手でRPGを敬遠しがちな人ほど逆に遊んでほしいかもしれません。 快適さを重視したユーザーフレンドリーなコンテンツが好まれる現代ですが、その逆を行くことで、これほどまでに苦難を乗り越える達成感を与えてくれる作品が生まれることに衝撃を受けました。 このゲームは決してテンポよく進みません。 ですが、他では味わえないゲーム体験を、ストーリーテリングを、必ず味わうことができます。 人に薦めるには少し迷う、それでもどうしても薦めてしまう、そんな作品です。