【ゲーム全体について】
Inverted Angel(以下、本作)は、噛み砕いて言えば、「知らん女が俺くんの彼女だと名乗ってインターホンを押してきたので、ドア越しに会話しながら相手の正体を探るゲーム」です。骨組みとしては、推理アドベンチャーのカテゴリに属します。 

このゲームの最も大きな独自性の一つとして、ゲームの説明文にもある「あなたが入力した推理が"だいたいのニュアンス"で判定される」という点が挙げられます。

これは何かというと、例えば、先行作品のように、選択式ではなく、推理のターンに入ると入力窓が出現して、そこに推理を文章として自由入力でき、自然言語処理AI(注!生成AIではありません)が文意を判定してくれる、というものです。

解答が選択式のゲームでは、本当に行き詰まったときはセーブ&ロードを駆使して総当たりすることも可能でした。(実際自分も何度かお世話になった)

一方で本作は、自由入力のため、自分でちゃんと答えにたどり着かないと先に進むことができない。

こう聞くとむずかしそうですが、自分の言葉で、自分の意思をゲームに介入させる、というプレイ感自体がとても面白いものですし、

およそ10〜12時間ほどでクリア可能なボリュームと、1000円しない価格からも、もし興味を持たれたら、あまり構えずに気軽にプレイしてみてほしい一作です。

【キャラクター】
本作で立ち絵があるキャラクターは、パッケージにもいる自称彼女の女の子(通称:彼女ちゃん)のみです。

「ゆめかわ系」のような服装で、勝手に彼女だと名乗っている点からも、いわゆる「ヤンデレ」か?と初めは思います。

しかし、会話を続けていくと、その印象は大きく覆るはずです。

『君は、自立と綺麗な対幻想とを両立しようとは思わないんだね』

彼女ちゃんは、哲学的な、難しい問いを幾度となくこちらへ投げかけてきます。

正直、この辺りは人を選ぶポイントではあると思いますが、一度ハマってしまえば、彼女ちゃんとの会話はとても面白い!

最初はもしかしたらくじけそうになるかもしれませんが、ぜひ彼女ちゃんの言葉に辛抱強く耳を傾けてみてください。

彼女ちゃん自身は、あくまで主人公(プレイヤー)との会話を楽しむために、あえてそうした難しい問いかけをしてきています。

こちらも楽しむつもりで挑んでみると、意外と面白いはずです。

【音楽・サウンド】
本作の音楽・BGM等は、全て作者の方が手掛けたものです。

本作は、「夜に、知らない女の人とインターホン越しに会話をする」という場面からほとんど動かないのですが、

それにも関わらず、BGMのおかげで、緊張感が高まったり、緩んだり、あるいはコミカルな雰囲気になったり…

まるで場面がコロコロと変わるようで、とにかく飽きさせてくれません。

そして何より、本作の主題歌である『Inverted Angel』は必聴。

よくよく聴くと、実はゲーム中の効果音が曲の中に使われていたりします。ゲームクリア後に、じっくり聴いてみてください。

【シナリオ】
いわゆるマルチエンディング方式であり、ルートや選択によって、彼女ちゃんと主人公の関係性も大きく変わります。

推理ゲームなので、あまり深くは話せませんが、

・彼女は何者なのか?
・彼女はなぜ、哲学的な問いをこちらへ投げかけてくるのか?

これらを考えながら読み進めてみてください。
その方が、彼女との対話の夜も、楽しくなるはずですし、全てを終えたあとに迎える朝焼けは、きっと綺麗なはずです。
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