「ミスをしたくない、もしもあの時やり直せたら、あの時のあの発言は不愉快だったろうか。そんな思いを少しでも抱いたことがある貴方へ」
舞台は魔王との決戦前夜。苦難を共に乗り越えた仲間たちとも決意を固め、ついに最終決戦が始まる......かと思いきや、自分だけがタイムリープをひたすら繰り返してしまう!
終わらない2日間を繰り返しながら世界を救う活路を見出すコマンドRPG。
この作品で特に衝撃を受けたのは、ゲームだからこそプレイヤーが直に味わえるタイムリープの苦しみです。ジャンケンを属性にした独自の戦略性を持つ戦闘システムはただの単純作業と化し、感動や笑い満ちた仲間との思い出は退屈な茶番劇へと色褪せてしまいます。楽しい冒険劇がどんどんと擦り減っていく苦痛が、タイムリープで疲弊していく主人公シフランの感情とリンクすることで、唯一無二のゲーム体験を得られるタイムループものの大傑作です。
前述した戦闘や仲間とのイベントは十分に面白いものなのですが、恐らくこの作品の核となるのは、それが記憶の中で風化していく悲哀と苦痛を抱えたシフランの巧みな心理描写の素晴らしさにあるのでしょう。そのまま出すだけで十二分に面白いゲーム体験をわざわざ繰り返させ、プレイヤーとシフラン双方にとって絶望のループに満ちた体験に変容させてしまう大胆さは、製作陣のこの作品に対する本気度を感じさせます。
作業と化したバトル、茶番と化した友情劇、苦痛にまみれたループを脱した先には、他では味わえない感動があること間違い無し。
自分はもともとコマンドRPGの作業感が好きな方ですが、今作に限ってはその作業感が苦手でRPGを敬遠しがちな人ほど逆に遊んでほしいかもしれません。
快適さを重視したユーザーフレンドリーなコンテンツが好まれる現代ですが、その逆を行くことで、これほどまでに苦難を乗り越える達成感を与えてくれる作品が生まれることに衝撃を受けました。
このゲームは決してテンポよく進みません。
ですが、他では味わえないゲーム体験を、ストーリーテリングを、必ず味わうことができます。
人に薦めるには少し迷う、それでもどうしても薦めてしまう、そんな作品です。