人間なら誰しも「あの時ああしておけばよかった」と思うことがあるでしょう。
例えば私の場合、難しい計算が必要になったとき、「もっと真面目に数学を勉強すればよかった」と思うわけです。そこで、このゲームには『数学を真面目に勉強した私』を作り出せる機械が登場します。『私』を作って計算してもらえば問題解決です!よかったよかった。
さて、この『私』は、この後どうしましょう。
そんなSFの物語です。
ゲームとしてはサバイバルクラフトと資源管理ストラテジーをあわせた内容で、無人惑星に不時着した唯一の生存者である主人公となり、生還することが目的です。
危険な超常現象に立ち向かいながらマップ探索で資源を回収し、様々なスキルを持った『自分』を増やして仕事を割り振ります。
しかし、増やした『自分』は少し異なった人生を歩んだ他人であるため、主人公への反発や人生に根ざしたトラウマ、作られた存在であることへの葛藤などを持っており、それぞれの『自分』と関わることでストーリーが展開します。
私はストラテジーやシミュレーションが好きなのでよくプレイするのですが、ゲームに出てくる『資源』も兼ねたキャラクターに感情移入することがあまりできていなかったように思います。主人公と一緒に一喜一憂することはできるのですが、それ以外のキャラクターはエンティティとして雑に処理していました。
しかし、このゲームに出てくるのは主人公と一部の人生経験を共有した存在であり、ストーリーを進めて主人公の人生が掘り下げられると他のキャラクターも自然と掘り下げることになり、分岐した人生から性格の違いのルーツが見えてきたりして理解が進みます。
そして、ある意味で親兄弟よりもっと近しい間柄となって苦楽を分かち合ううちに、かけがえのない仲間と思える存在になっていました。
また、特筆すべき点として、SF作品として設定や話の展開が面白いです。
倫理やエゴから生まれる選択によってストーリーがインタラクティブに分岐していき、異なった結末に行き着く流れもよくできているので、小説や映画でなく『SFゲーム』として意味のある作品だったと感じます。
良いSFを摂取しつつ感情を揺さぶられる素晴らしいゲームでした。