2021年に「It takes two」がThe Game Award for Game of the Yearを獲得した時、今から考えると僕は驚くほどそのゲームに関心がなかった。なぜなら「It takes two」は2人プレイが前提のゲームだからだ。僕の妻は基本的にゲームに興味がなく、むしろどちらかと言うとゲームを敵視しているし、なんとかお願いして一緒にプレイしてもらったとしても、クリアまでの長丁場を付き合ってくれないことは明らかだった。ゲームをやる友達もいないことは無いが、哀しいかな皆アラフォーの家族持ちで、時間を合わせて継続的にプレイするのはそれだけでかなり高いハードルだ。わざわざゲームを買ったけれど、誰も一緒に遊んでくれないなんて、そんな悲しいことは無い。そんなわけで、僕は「It takes two」の存在は知っていたものの、プレイするのを端から諦めてしまっていた。

そして時は移り、2023年。何かの拍子で「It takes two」がXbox Gamepassに入っていることに気が付いた。ゲームをわざわざ買う必要がないならやってみてもいいかもしれない、と言うか、なんとかしてやりたい。とその時の僕は強く思った。というのも、その少し前に「ブラザーズ:2人の息子の物語」をプレイして、いたく感銘を受けたからだ。「It takes two」はこの「ブラザーズ」を手掛けたゲームディレクター:ジョセフ・ファレス氏の最新作なのだ。
しかし、ゲームを入手したとしても、依然として誰とやるか問題が残っている。そしてその時、真っ先に思い浮かんだのは今年で5歳になった息子だった。「It takes two」が発売された2021年、3歳だった息子はいまや5歳になり、スーパーマリオのクッパを一人で倒せるくらいには成長していた。

「これはワンチャンいけるかもしれない・・・っ!」

思い立ったら吉日、Nintendo switchの幼児用コントローラー(サイバーガジェット製)をPCのUSB端子にぶっ刺して動作確認。。。よし!動く!!えらいぞサイバーガジェット!!!
あとは本人にやらせてみて、、、おおぉ、、意外とできる!少なくとも妻よりはだいぶできる!!すごいぞ5歳児!!!
そんなこんなで、アラフォー親父と5歳息子の「It takes two」がスタートしたのであった。


・・・と、前置きが長くなってしまった。。
結果的に、5歳息子とプレイした「It takes two」は大満足!!!
ゼルダティアキンと迷った挙句、晴れて僕のGOTY 2023を獲得するに至った。2021年のゲームをGOTYに選ぶのは少し抵抗があったが、何よりも初めて息子と2人でクリアしたゲームだ。これはMY GOTYに値する。

・家族と夫婦がテーマ
このゲームのストーリーは今にも離婚しそうな一組の夫婦(夫:コーディと妻:メイ)とその娘(ローズ)を中心に描かれる。ローズはいつも喧嘩している両親にうんざりしていて、仲の良かったころの両親を模した人形を作る。プレイヤーはこの人形に魂が乗り移ってしまったコーディとメイを操作し、大冒険を繰り広げるというのがこのゲームだ。
人形になった二人は最初はいがみ合っていて「人間に戻ったらすぐに離婚してやる」なんて言っているが、力を合わせて敵と戦ったり、プロポーズの思い出の場所を訪れたりするうちに少しずつその関係性を修復していくことになる。
各ステージには様々なボスがいるが、最初に登場するボスは掃除機だ。メンテナンスされず物置に忘れ去られた掃除機が、怒り狂って主人公たちに牙をむく。他にも、放置され錆びて穴の開いた工具箱、いつの間にか庭木に巣くった巨大なハチの巣、手入れされず枯れようとしている花壇の草花など、家庭のあるあるネタが随所にちりばめられておりなんとも趣深い。ちなみにうちの息子は「掃除機さんかわいそう!!ちゃんと大事に使わないとダメだよね!!」と怒っていたので、教育的にも良かったと思われる。
また、ゲーム後半ではそれぞれがかつて胸に抱いていた夢にフォーカスし、2人は日々の生活に追われて忘れかけていた情熱を取り戻していく。家族が上手くやっていくには、お互いへの愛情だけではなく、それぞれの情熱や自己実現も必要ということだろう。まず自分自身を愛することができなければ、他者を愛することなどできないのだ。このあたり、バツ1マル2アラフォーの僕としてはとても共感できるストーリー展開だった。

・盛りだくさんの遊び要素
このゲームの最も優れた点は、ステージごとに遊びのギミックが変わることだろう。例えばあるステージでは2人で釘とカナヅチをそれぞれ担当、次のステージではオイルとマッチ、また別のステージでは磁石のN極とS極、というふうにステージごとに異なるギミックが用意されている。普通のゲームならエンディングまで使うような仕掛けを1ステージで使い捨てていくので、プレイヤーとしてはステージごとに別のゲームを遊んでいるような感覚で、エンディングまでまったく飽きずにゲームを遊び進めていくことができる。
さらに各ステージの随所にミニゲームがちりばめられており、オセロ・チェス・射的・ピンボール・カーレースなど、大量のゲーム・イン・ゲームが用意されている。また、雪のステージでは雪玉をぶつけあったり、スケートでパルクールアクションを楽しんだりと、ちょっとした箱庭で自由に遊べるシーンもあり、遊びのボリュームという意味で本当に圧倒的な物量を誇る贅沢なゲームだ。息子と二人でストーリーそっちのけでワーキャーと雪合戦をしたのはとても楽しかった。

・配信映えしそう
最近息子がヒカキンのマインクラフト実況を好んでよく観ていたので、マイクを設置してなんちゃってゲーム実況をやってみたところ、これに親子でハマってしまった。休日には夕食前に2人でゲームを遊び、録画した実況動画をテレビで見ながら夕食を食べるというルーティンができたほどだった。(妻はお気に入りのバラエティ番組が見られず不満げだったが・・)

子:ブーンブーンハローユーチューブ!!
父:はい!それではパパキンと息子キンのIt takes two実況を始めていきたいと思いまーす!!
子:はい、おねがいしまーす!!
父:さーて、前回はどこまでやりましたっけ?
子:えーっと・・・・忘れちゃった。。。エヘヘ
父:忘れたんかーい!!

親子で遊んでいるところを長時間録画するという体験自体が新鮮で思いのほか楽しかったし、これからも息子の成長記録として定期的に実況動画を記録しておこうと思った。子供が大きくなってから見直してみるのもまた楽しそうだ。
我々の動画は我が家で楽しむのみだが、2人でワイワイやるゲームなので、ゲーム実況や配信等にかなり向いているゲームだと感じた。


さて、ここまでいいことばかり書いたが、5歳児とプレイするには多少の問題点もあった。まず一つは、ゲームの特に序盤は「離婚」という言葉が飛び交うことだ。今まさに離婚しようとしている夫婦の片方を5歳の息子にやらせるのは多少抵抗感があったし、息子に「離婚って何?」と度々聞かれて、「えっと、喧嘩することかな。ほら、パパとママさんもたまに喧嘩するでしょ」などと苦し紛れに受け流すことになった。
もう一つ、ゲームの中盤でコーディとメイが娘のローズに結構ひどい仕打ちをするシーンがある。ここで詳細は省くが、このゲームをやったことがある人なら「象のぬいぐるみ」というキーワードで察しが付くだろう。これには我が家の5歳児もドン引きしていた。ストーリー上、親が自分のことばかり考えて娘に向き合っていないことを示唆するための演出だと思うが、ここは観ているだけでも結構つらいものがあった。
最後の一つ、これは良くも悪くもだがこのゲームは結構難易度が高い。特にボスが強く、2人ともそれなりにシビアなプレイを求められるので、当然ながら5歳児にはだいぶハードルが高かった。息子は途中何度か泣いたり投げ出しそうになったが、時間をおいてリトライしたり励ましたりして何とか最後までクリアすることができた。大人でもそれなりに歯ごたえがあったので、5歳児には相当な試練だったはずだ。エンディングにたどり着いた時、本人はもちろんとても喜んでいたし、息子の成長に少し涙してしまった父なのであった。


「It takes two」はぜひ家族や恋人、親しい友人と一緒にプレイしてほしいタイトルだ。その体験はかけがえのない楽しい思い出になるだろうし、家族や夫婦の幸せやあり方について改めて考える良い機会になるかもしれない。今ならXbox Gamepassの他、PS Plusエクストラカタログにも収録されており手も出しやすい。ぜひ多くの人に手に取ってほしい良作だ。

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昨年に巷で話題になったいわゆる「狐ゼルダ」。
ポッドキャスト「ゲームなんとか」でパーソナリティのこへいさんが2022年のGOTYに選んでいたのと、今年1月にXbox Gamepassを契約したら入っていたというのでプレイしてみた。


最初は軽い気持ちで始めたので、まずはその難易度の高さに驚いた。敵が強い。めちゃくちゃ強い。特に序盤で剣を手に入れるまでは理不尽に強い。なので序盤でくじけそうになってツイッターで弱音を吐いたところ、たくさんのゲーマーさんたちが優しく、時にはゲス顔で背中を押してくれ、なんとか序盤の山を乗り越えることができた。(ちなみに、敵の強さについては難易度調整もできるのでご安心を)

そして、このゲームが面白くなってくるのは中盤からである。文章で説明するのは難しいのでここで詳細を説明するのはハナからあきらめているのだが、一言でいうとゲーム性がガラッと変わる。それまでは激ムズのアクションゲームだと思っていたのが、気づくと激ムズの謎解きゲームに変わっているのである。そこからは普段パズルゲームなどやらない自分が寝ても覚めてもTUNICの事しか考えられなくなり、実際にXboxクラウドゲーミングを駆使して寝る直前までベッドの中で思考する日々が続いた。そして実際に最後の謎が解けたのはベッドの中だった(笑)が、謎は解けたもののその日のうちに「作業」ができず、翌日仕事から帰宅後に「作業」して数回リトライしてクリアできた。(実際にクリアした人なら何を言っているのか分かってもらえると思う。)

TUNICをクリアしてからもう半年ほど経つが、いまだに最後の扉を開けた瞬間を思い出すと目頭が熱くなる。
昔ニンテンドーDSの脳トレソフトで「アハ体験」という言葉が流行ったが、TUNICはいうなれば「アハハハハハハハハハハハ体験」である。アハ体験が怒涛の如く連続で押し寄せ、エクスタシーに達するレベルの体験をすることができる。
ぜひ多くの人にプレイして欲しい作品だ。

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ゼルダティアキン、FF16、アーマードコア6、Starfield・・・
今年は本当に大作が立て続けにリリースされた年だった。僕はアーマードコアのバルテウス戦で燃え尽き、Starfieldの宇宙船ビルドに疲弊し、なんかもう疲れてしばらくゲームするのやめようかという時に出会ったのがこのゲームだった。


このゲームのイメージイラストを見た最初の印象は、「絶対夢中になるスマホゲーム6選」的なゲーム広告のサムネみたいだなと思った。ああいうのはだいたいサムネ詐欺で、リンク先に行ってもサムネ通りのゲームが紹介されていることはまずない。なので、正直このゲームも最初は期待していなかった。しかし、Xにプレイ動画をあげている人が何人かいて、それがとても面白そうだったので、ゲーパスに入っていることもありプレイしてみることにした。

プレイフィールは上田文人のICOを彷彿とさせる雰囲気で、主人公は一人で巨大な塔(というよりもはや巨大な岩山)を登っていく。基本的にはロッククライミングがゲームの主要素で、プレイヤーはL2R2ボタンをタイミングよく交互に押して壁の突起を掴み、断崖絶壁を登っていく。一見すると単純作業のようだが、サクサクと小気味よい操作感でただ壁を登っているだけでも楽しい。中盤からはロープアクションなど追加要素も出てきて、中だるみさせないゲーム性も秀逸だ。

塔の下の砂漠にはいたるところに貝殻や船の残骸が散らばっていて、そこがかつて海だったことを物語っている。巨大な塔にはかつて人々が暮らしていた痕跡があり、あちらこちらに人々の日々の暮らしを綴ったメモが残っている。どうやらここに住んでいた人たちは、何らかの理由でほかのどこかに移ってしまったようだ。このようにストーリーらしいストーリーは無く、人々が残していった書物や壁画、暮らしの痕跡などから過去の出来事を想像しながらゲームを進めていく。いわゆる環境ストーリーテリングという手法だが、語り過ぎない感じがゲーム全体の雰囲気とマッチしている。プレイヤーは人々の痕跡を探してもいいし探さなくてもいい。最初からまっしぐらに頂上を目指してもいい。そして、頂上のエンディングでは主人公がここに来た理由が分かるようになっている。


ゲームの手触りから、てっきりインディーズゲームだと思っていたのだが、後にこれを作ったのはLife is strangeシリーズを手掛けたDon’tNodだということを知り、そりゃ面白いわけだと納得した。
プレイ時間は普通にやって5時間程度、収集要素をやりこんでも8時間程度とコンパクトなので、自分のように大作に胃もたれしている人にはぴったりのタイトル。箸休めにどうぞ。

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