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コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ

Game of the Year 2025
agari(アグアリ) さん
コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ
ファンタジーな異種族が共存する現代社会。そこで営まれる夜にしか開かないコーヒー店。その店長として、様々なお客さんとの会話を楽しむノベルゲーム。 お客さんのざっくりとした要望に合ったコーヒーを入れられるかでストーリーに変化が生まれる仕組み。話の大筋は1本道だが、提供したコーヒーを飲んだあとの会話が少し変化する。要望通りなら、それぞれのエピソードの真相が明かされるエンディングへと繋がり、要望とズレた飲み物を提供してしまうと大事な部分は口をつぐんでしまう。 会話のテンポはやや独特であるが、落ち着いて話せる夜の静かなカフェというシチュエーションと、ゆったりとしたBGMがとても良い雰囲気。これが「チル」というものか、と初めての感覚を覚えたのも本作である。 私は図らずも、このシチュエーションと同じように、夜眠る前の周りが静かな時間帯にプレイしていた。そのせいか、ゲーム内の雰囲気と良くマッチし、とても自然に没入できた。 2周目以降は攻略サイトに頼りつつも、すべてのエピソードの真相が見たいという欲が途切れず、一通り遊び終わったあとの満足度は非常に高かった。 また、本作は毎日少しずつ進めるのにちょうど良いボリュームでもある。ゲーム内では「1日」ごとに区切りよく進行していくため、私は「リアルな1日で、ゲーム内の1日分だけ進める」というスタイルで進めていた。私にとっては、それがちょうど良かったのかもしれない。最後までモチベーションを維持したまま楽しむことができた。 コーヒートークシリーズの何が一番良いかと問われれば、私は「雰囲気と、ささやかな心の交流が垣間見えること」と答える。 登場人物たちはそれぞれに、大小さまざまな問題を抱えている。こちらができるのは、その人のことを想った”あたたかい一杯”を提供することのみ。そのたった一杯のコーヒーが、ほんの僅かに心を解きほぐす。悩み事を抱えながらフラッと入ったこの場所に、自分は受け入れられたという安心感があるのかもしれない。お店に入ったときには口に出すつもりのなかったことを打ち明けられたり、それをたまたま聞いた他のお客さんとの繋がりや新たな関係性が生まれたりもする。心と心の距離がよく見える。 そして何より、皆、言葉選びが穏やかで優しさに満ちている。とても心地よいのだ。 何日もかけ、ゆっくりと紡がれていく視えない糸。表情や会話の間(ま)から感じ取れる心の機微。彼らはそこに存在し、それぞれの人生を生きている。その行く先を見てみたい。そんな気持ちがモチベーションとなる。 人の話に耳を傾けるのが好きな方なら、本作もきっと気に入るはずだ。 ストーリーは前作からの続きモノであるため、今からプレイするなら前作『コーヒートーク』からのプレイを推奨する。もちろん、本作『エピソード2』からでも楽しめなくはないが、前作から続投しているキャラたちの背景を知っているとより深く理解が進む。 そして、惜しむらくは、作者であるモハメド・ファーミ氏が本作『エピソード2』のリリース前に急逝していること。本作には、その件に関連した隠し要素もあったりする。気になる方はゲーム内容だけでなく、周辺情報も調べてみるとより味わい深く感じられるだろう。 そう、まるで彼らに淹れてきた”一杯のコーヒー”のように。 お気に召すかどうかは、もちろんあなた次第。 私にとっては極上の一杯となった本作が、今年のMyGOTYである。 (プレイ時間:約13時間)