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Gran Turismo7

Game of the Year 2025
小出和明 さん
Gran Turismo7
初代グランツーリスモに触れたとき、わたしは戸惑いました。 アクセルは押しっぱなし。 曲がる時はジャンプしてドリフト。 アイテムを使えば、最下位からも成り上がれる! そんなレースゲームの鉄則が全て通用しないのですから。 私は多分、ゲームに「手応え」を求めていないのです。 いっときの快楽を貪るように、自分が主人公になってバッタバッタと敵を切りつける。 そんな妄想に浸れればいいとすら思います。 スピードを出しすぎて、ブレーキをかけなければすぐコースアウト。 常に同じ軌跡を描くようにコーナーを何周も曲がる作業なんて、まるで主人公らしくない。リアルすぎるんです。 そんな自分が、知り合いから勧められ購入したのがグランツーリスモ7でした。 「コースを、雑談しながら走ろう」 そんな友人の誘いに、少し興味が湧きました。 ニュルブルクリンクという、実在するサーキットがあります。生活道路と地続きにあるという不思議なそのサーキットを走りながら、さまざまな話をしました。 近況や、最近やった面白いゲーム。見た映画。 プロでも一周6分かかるコースなので、本当にドライブツーリングをしているような心持ちです。 話が尽きなければ、そのままもう一周。 ちょっとスピードを出してみようかな、ともう一周。 そのうちに、体がコースを覚え始めました。 一周14分が、12分。 12分が11分。 徐々に、コーナーの位置を覚える。 ストレートでスピードを出していいところを理解していく。 そしてなにより「ここは実際に在る場所」であることも、なんだかワクワクとする要因でした。 プロのレーサーが走る場所を走り、徐々にだけれど、プロに近付いて行っている実感の面白さ。 雑談がコースの攻略の話になるころには、もう夢中になっていました。 翌日に買ったハンドルコントローラーのおかげで、貯めに貯めた電気店のポイントが0になりましたが、後悔は全くありません。 ハンドルコントローラーから伝わる、コーナーでグリップするタイヤの手応えを感じながら、いつの間にか9分を切れるように。 フィードバックされる感触が、より自分をプロレーサーに近づけてくれます。 私は、バッタバッタと敵を切り付ける主人公の妄想が好きですが、同時に、レーサーのごっこ遊びももちろん好きだったわけです。 弱い四十も過ぎれば、新しい自分の興味や興奮に諦めが出てきます。 まだ、世界は面白い。そう気づかせてくれた、グランツーリスモこそ、私のGOTYに相応しい一作だと感じています。