みんなのGOTY(ゲーム別)

新着順 Game of the Year 2025 ゲーム別

HUNDRED LINE -最終防衛学園-

Game of the Year 2025
夜中たわし さん
HUNDRED LINE -最終防衛学園-
100日間のストーリーと、100種類のエンディングがある大々々ボリュームの狂気のゲーム。 それがHUNDRED LINEです。ようこそ。 「100種類って言っても、最後の方の選択肢で分岐してるのがほとんどなんじゃない?」と、アドベンチャーゲームに心得のある方は考えるかもしれません。 ご安心ください。さまざまなポイントで順当に分岐が用意されているので、しっかりボリュームはあります。というか、ありすぎます。 そのシナリオの圧倒的な引力によって私は1ヶ月以上、100時間を超えて遊びました。気づいたら「生活がHUNDRED LINEになっていた」のです。 HUNDRED LINEは、単に面白いゲームではありません。 生活に入り込み、破壊してくるタイプのゲームです。 それでも私は、だからこそこの作品を2025年のゲームオブザイヤーに選びました。 本作の基本は、テキスト主体のスタンダードなアドベンチャーゲームです。 そこに、時折シミュレーションRPGの戦闘が挟まります。 舞台は謎の学園、最終防衛学園。 主人公たち少年少女は突然、正体不明の化け物たちから100日間学園を守れ、と命じられます。 なぜ100日なのか? この最終防衛学園とは何なのか?? 敵は一体何者なのか??? 序盤は何ひとつ説明されません。 とにかく、わからない──。 わからないまま話が進み、事件が起き、登場人物たちの身には次々と予想だにしないことが起こります。 当然、続きを遊ぶのをやめられません。 「あと一日進めれば、多少なり謎が解けるのでは?」 というムードを信じてゲームを進めるも、当然のように謎は解けません。むしろ増えます。どんどん謎が増える。そしてあと一日、あと一日と進めてしまう。まさに呪いのゲームです。ああ、もう太陽が昇ってくる……。 長い道のりを経て「真相解明ルート」にたどり着くことで大方の謎は解けます。ただし、ここで本作のエンディングが100種類あることが問題に。そう、このルートにたどり着けるかは運次第。初回で到達する人もいれば、いつまでたってもたどり着けない……そんなこともありえます。 ルートごとの展開はかなり多種多様で、推理要素の強いルートから、コメディ要素の強いルート、恋愛ルートにSFルート……なんでもありです。正直、このルートは不要では!? というルートもあります。しかしそれが、それでこそHUNDRED LINEなのです。変なルートを引いても、次のルートこそ面白いのでは!? と期待させられます。 このごった煮感は、アドベンチャーゲームのスピンオフやファンディスク、小説版などを全て合体させて1本のゲームとして提供された状態に近く、並のテキストアドベンチャーゲームを5本合体させたくらいの物量です。あまりのボリュームと分岐から、しばしば「オープンワールドタイプのアドベンチャーゲーム」と呼ばれることもあります。 ちなみにルートの分岐はスタンダードな選択肢方式ですが、この分岐を選ぶのもいちいち苦しい! 極限の選択を迫られることもかなり多く、どちらを選んでも誰かが死ぬ……くらいの選択肢も当然のように出てきます。ま、結局全部の選択肢を選ぶんですけども(やる気さえあれば)。 本作の大変さは他にもあります。 シミュレーションRPGの戦闘パートは斬新で、特に「やられたほうが有利になる」というシステムが特徴的で面白いです。ただし序盤~中盤にかけてこそ新鮮ですが、複数ルートを進めるうちに「もうこれやってりゃ勝てるやん」というパターンが見つかってしまい、戦闘は「シナリオを進める上での障害にしかならない作業」と化します。 それでも、結局のところやめられません。 「この先を見ないと終われない」と思わせられるストーリー。これは文句無しに今年遊んだ中で一番引き込まれました。 おかげで全てのエンディングを見るまで進めてしまいました。まあ正直途中からは意地です。私とHUNDRED LINEの真剣勝負でした。ギリギリ勝てました。 ともかく、恐るべき狂気と労力によって完成された、プレイヤーの生活に入り込んで強烈な記憶を残していくゲームです。刺激的なストーリーが好きで、時間と体力を削られる覚悟があり、膨大なテキストの海に飛び込みたい人。そういう人には迷わずおすすめできます! ……次回作はエンディングの数、5種類くらいでいいです。