最初にこの作品を見たときの印象は、正直小綺麗なアクションアドベンチャーの一作という程度だった。
だが後にXbox向けの開発チーム紹介のショーケースで、実は本作が JRPGを深くリスペクトしたターン制RPG だと知り、興味のフェーズが一気に跳ね上がることになる。
世界には「ペイントレス」という女神が存在し、モノリスに数字を刻むと、その数字の年齢に該当する人間が消滅する――。
この世界観の設定に触れたときから、いい王道だなあと惹かれてはいたが、ターンベースRPGとこの世界観が結びついた瞬間、ひとつの確信が生まれた。
「これは絶対プレイしておくべきゲームでしょ」と。
ところが実際に物語が始まると、王道を思わせるあらすじとは裏腹に、冒頭は絶望そのものから始まる。
出発の地"ルミエール"にて、他の人物同様主人公の恋人であろう人物が目の前でペイントレスによって消滅し、心が地面に叩きつけられるような喪失の中、主人公は討伐の旅へと踏み出していく。
そのギャップの落差がはっきり言って序盤から凄まじすぎた。
そもそもこの世界では既に半世紀以上ペイントレスによって人間が消滅させられているわけだが、その消滅という現象を旅立ちの日という形で変換し、祝祭の日として町が盛り上がっている光景も頭を抱える。
要はお祝いの日だと無理にでも振舞っていないとメンタルが持たないのだ。
これまで数多の消滅と向き合ってきたルミエールの人々の現実逃避の様子も垣間見える。
その後遠征部隊は到着した島でほぼ虐殺のような形で崩壊してしまうのだが、生き残った仲間たちの合流を目指す最初の一歩。
重い空気をまとった物語の直後に待っていたのは、最初のダンジョン 「春の牧草地」 のチルで美しい空気感。そして耳に残る圧巻のBGM。
あんな残酷なことがあったのに、なんでここはこんなにきれいなんだ?と、この随所に見られる対比が本作の魅力を象徴していると感じる。
その後も物語は序盤から終盤にかけて次々と衝撃を投げかけてくる。
「おそらくこういう展開だろう」と予想しても、それを必ず上回り、時に裏切り、最後には “そう来たか” と膝をつきたくなる終盤が待っている。
それを彩るのは、強烈に個性の立った仲間たち、そして音楽。
それによって忘れることのない旅の思い出が刻まれていくのを肌で感じることが出来ていたと思う。
戦闘面ではコマンドRPGにパリィというアクション性を自然に溶け込ませたシステムが非常に新鮮だった。
普段ソウルライクを多く遊ぶタイプではないが、敵のパターンを読み、レベルが低くても勝つ喜びをターン制RPGで味わえる体験は、今後のRPGの未来を想像させるほど新しかった。
JRPGリスペクトという触れ込みだったため、プレイ前は「FF?ゼノ?それともペルソナ?」とインスパイア元を探しながらプレイしていたが、クリアしてわかったのはただ一つ。
なんとか33もとい"Clair Obscur: Expedition 33"は立派な新時代のRPGだったということだ。
(後にThe Game Awardsの受賞で坂口さんの名前を出したのでまあそういうことなんだろうとは思うが)
このゲームが受け入れられている理由は他にも様々あると思うが、プレイした世界中のユーザーはきっとこう思ったはずだ。
『こういうのでいいんだよこういうので』