小出和明のGOTY・レビュー

コンソールアーカイブス UFO -A day in the life-のゲーム画像
レビュー
小出和明 さん
コンソールアーカイブス UFO -A day in the life-
大昔のプレイステーションのゲームが、まさかアーカイブとしてほぼ全プラットフォームに再登場。地味に、プレミアム価格がついていて買い直せなかった逸品。 moonの制作会社ラブデリックが手掛ける、宇宙人探索ゲームなのだが、宇宙人はまるで見えない。写真に収め、現像するその瞬間まで。 あるアパートにUFOが墜落。多数の宇宙人がそのアパートにて助けを求めているが、姿見えない。 アパートの各部屋で起きる異変から推察して探査員(こいつも宇宙人)がその何もない空間を激写。UFOに持ち帰り現像をして、宇宙人が写っていればその宇宙人を救出できる、というのが一連の流れ。 このアパートに住む住人のクセの強さや、少し先が気になるストーリーがまた気になるのである。 宇宙人を助けるたびにストーリーが進んでいくので、見えない宇宙人の気配を感じ取る、当時のゲームらしい少し理不尽さを感じるノーヒント具合でも、乗り越えるモチベーションはマックスに。 陳腐な言い回しではあるが、ゲームシステム、ビジュアル、ストーリーの全てが高いレベルで融合していてとても楽しいのだが、わたしがこのゲームに強い思い入れを覚えるのは、なにより「見えない」部分を「描いている」潔さである。それは、ゾッとするほどだ。 遭難した宇宙人は見えないのだが、プログラム上では全て「いる」。だから、写真に撮るとその瞬間が写る。 それは、何かアクションを起こしていないときでも、ただ移動しているときでも、ちゃんといる。撮れば、写る。 個性豊かな宇宙人たちは、惜しげもない労力を使ってデザインされ、配置され、動かされているのを、我々はゲーム中に写真を通す以外で、いっさい「見ることができない」。 だからこそ、ゲームが面白い、という、これはとんでもないことである。 貴族の遊びのようなその贅沢さが、このゲームの根底を支えて、長く愛されているのかも知れない、と20年以上ぶりに再プレイをしたわたしは、やはりぞっとした。
マジカスのゲーム画像
レビュー
小出和明 さん
マジカス
いわゆるソシャゲーが苦手だ。もちろん、いいソーシャルゲームもあるんだと思うし、長いスパンで愛されているものもある。十把一絡げにして悪辣に語るつもりはない。 けれど、どうしてもつまり、わたしは、ソシャゲーの「体験」自体が苦手なのだ。 間口を広く、最初は気持ちいい戦闘の難易度に、10連、20連とガチャでの強化、テンポよく進むストーリー。それがどこかの(そしてそれは運営の思い通りの)タイミングから、課金をしなければ進みがとても遅くなる。 これは別にガチャのあるソーシャルゲームにかかわらず、無料のスマートフォンアプリにおいて、どのゲームも同じ体験であると思っている。そういう意味では「無料アプリが苦手」と括ってもいいかもしれない。 同時に、無料でなければ遊ばれない、というジレンマも抱えているのだろう、とも思う(知名度のあるゲームのスマートフォン移植は買い切りであることが多いし)。 2歳児の子育てをしながら、なかなか1周40-60時間というゲームをプレイするタイミングないため、スマートフォンのゲームに癒しを求めていた私にとっては、かなり死活問題であった。 そのなかで、この「MAGICUS(マジカス)」というゲームは、いさぎよい買い切りのゲームである。 メインのゲームシステムは、パズドラに代表されるいわゆるマッチ3パズルライクなシステムである。 それも、地味目の。 しかし、絶妙な難易度に、丁寧な世界観と、設計が、まるで飽きさせない。射倖心を煽るのではなく、ゲームとして真っ当に好奇心を煽る作り方がされている。 それでも、ゲームを続けていくと、自身の強さ(これは、プレイヤースキルとステータス両面の意味を持つ)を実感でき、ただ敵が強いというだけでない「やりごたえ」を感じる。 かなり昔のゲームではあるのだが、今プレイしてもまるでゲーム体験に古さはない。美しく、丁寧な設計に、引き込まれるストーリーテリングはかなり見事だと思う。 買い切りスマートフォンゲームというジャンルがあるのかわからないが、そうしたものがもっと活発になってくれたら良いのに、とこのMAGICUSの面白さから気づく人、声を上げる人が一人でも増えると嬉しい。
Gran Turismo7のGOTY画像
Game of the Year 2025
小出和明 さん
Gran Turismo7
初代グランツーリスモに触れたとき、わたしは戸惑いました。 アクセルは押しっぱなし。 曲がる時はジャンプしてドリフト。 アイテムを使えば、最下位からも成り上がれる! そんなレースゲームの鉄則が全て通用しないのですから。 私は多分、ゲームに「手応え」を求めていないのです。 いっときの快楽を貪るように、自分が主人公になってバッタバッタと敵を切りつける。 そんな妄想に浸れればいいとすら思います。 スピードを出しすぎて、ブレーキをかけなければすぐコースアウト。 常に同じ軌跡を描くようにコーナーを何周も曲がる作業なんて、まるで主人公らしくない。リアルすぎるんです。 そんな自分が、知り合いから勧められ購入したのがグランツーリスモ7でした。 「コースを、雑談しながら走ろう」 そんな友人の誘いに、少し興味が湧きました。 ニュルブルクリンクという、実在するサーキットがあります。生活道路と地続きにあるという不思議なそのサーキットを走りながら、さまざまな話をしました。 近況や、最近やった面白いゲーム。見た映画。 プロでも一周6分かかるコースなので、本当にドライブツーリングをしているような心持ちです。 話が尽きなければ、そのままもう一周。 ちょっとスピードを出してみようかな、ともう一周。 そのうちに、体がコースを覚え始めました。 一周14分が、12分。 12分が11分。 徐々に、コーナーの位置を覚える。 ストレートでスピードを出していいところを理解していく。 そしてなにより「ここは実際に在る場所」であることも、なんだかワクワクとする要因でした。 プロのレーサーが走る場所を走り、徐々にだけれど、プロに近付いて行っている実感の面白さ。 雑談がコースの攻略の話になるころには、もう夢中になっていました。 翌日に買ったハンドルコントローラーのおかげで、貯めに貯めた電気店のポイントが0になりましたが、後悔は全くありません。 ハンドルコントローラーから伝わる、コーナーでグリップするタイヤの手応えを感じながら、いつの間にか9分を切れるように。 フィードバックされる感触が、より自分をプロレーサーに近づけてくれます。 私は、バッタバッタと敵を切り付ける主人公の妄想が好きですが、同時に、レーサーのごっこ遊びももちろん好きだったわけです。 弱い四十も過ぎれば、新しい自分の興味や興奮に諦めが出てきます。 まだ、世界は面白い。そう気づかせてくれた、グランツーリスモこそ、私のGOTYに相応しい一作だと感じています。