Dear Neva

早いものだね。こないだまであんなに小さかったのに。私の足下で必死に飛び跳ねてたのが昨日のことのように感じるよ。
2人で色んな景色を見て、色んな奴らと戦って、一杯笑ったし、一杯傷ついた。でも今はそのどれもがかけがえのない思い出なんだ。

夏は鬱陶しいくらいの緑と光に囲まれてさ、君は見るもの全てに興味深々で、そのちっちゃな瞳がガラス玉みたいに輝いてた。「おーい!Neva!置いてくよー!」。声をかけないと私のことも忘れて蝶々にじゃれてるんだから、困ったものだったよ。でもそんな君の透き通るような無邪気さがとっても愛しい夏だったね。
奴らが現れたときは、その小さい身体が丸く、もっと小さくなっちゃうんだ。ごめんね、恐かったよね。身を縮こまらせて怯える君を撫でると、私に頭を擦り寄せてくれたとき、「この子は私が守る。」って思ったんだ。

君はあっという間に大きくなって、気がつけば騒がしいほどの緑は赤く、茶色く、穏やかな季節になっていた。君も同じだよ、Neva。なんだかお姉さんらしくなって、歩く姿も少し凛々しく見える。私の後ろ姿を必死に追いかけていた君が、自ら私の前を歩いてる。たったそれだけ、何気ないことなんだけど、私は嬉しく思うんだ。君にはまだ分からないよ、私も今知ったんだから。親っていうのはこういう気持ちなんだろうね。
奴らが出ても怯えていた君はもういない。自分から戦ってくれるようになって、私も沢山助けてもらったね。ありがとう。でもたまに周りを見ずに突っ込んで行っちゃうところとかは頂けないな。「Neva!」って呼んでるのに返事もしなくて、何度心配したことか。そういう夢中になっちゃうところは子どものままだね。あ、蝶々飛んでるよ!ほらほら!…あはは、冗談だよ。怒らないで!

鮮やかな色は溶けるように消えて、冷たい季節がやってきた。時間は止まって、音は消える。そんな気さえする、悲しいような美しい季節だ。一方で君の時間は進み続けた。もう私より大きいね。君が全力で走ったら私なんかすぐに離されちゃうな。これじゃああの頃と逆だ。面白いような寂しいような、不思議な気持ちだよ。
君の背に乗ってさ、静まり返った空気を切り裂くみたいに走り抜けるのは気持ちよかったなぁ。星空の下で鏡みたいに水が張った場所を覚えてる?あれは本当に綺麗だった。息を呑むっていうのはああいうことなのかも。すっかり大人になった君は「ふーん。」って澄ました顔で見てたけど、そのキラキラした目と興奮気味の鼻息を私は見逃さなかったよ。本当ははしゃぎたかったでしょ?
言いたかったけど、大人らしくさせてあげようかなって思ったんだ。私の中では相変わらず可愛い君のままだけどね。



春が来た。私の嫌いな季節だった春が。鳥が鳴いて、花が咲き乱れる。あぁ、嫌だ。でも、綺麗だ。
Blomaを見てるとあの頃の君を思い出すよ。本当にそっくり。声をかけるまでずっと花と遊んでるところなんか、正にね。まぁだからBlomaって名前を付けたんだけどさ。ぴったりでしょ?
私は君をずっと「守らなきゃ」って思ってたけど、逆だった。私はいつも君に守られてたんだ。それに気づくのには随分時間がかかったよ。だから今になって手紙なんか書いてるんだけどね。
Neva。君の瞳も、毛並みも、背中も、息づかいも、その全てが大好きだよ。ありがとう。
これを伝えたいだけだったのに、なんだか照れ臭くて長くなっちゃった。あ、Blomaが呼んでるな、もう行かないと。また手紙書くよ。それじゃあまたね。Neva。

Alba
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