ライチのGOTY
GAME OF THE YEAR
SILENT HILL f
ベスト叫んだ賞
都市伝説解体センター
ライチのGOTY
GAME OF THE YEAR
SILENT HILL f
ベスト叫んだ賞
都市伝説解体センター

GAME OF THE YEAR
SILENT HILL f
・次第に混ざりゆく世界と自他...この雛子は誰?

サイレントヒルfは外伝的な立ち位置として日本を舞台とした作品。
サイレントヒルシリーズは毎度身近な住宅街が非日常に飲まれていく描写が禍々しくも美しい。原風景がひずみゆがんでいく様子は嫌悪感を引き出しつつも、心のどこかに潜んでいる破滅願望を満たさんとする美を併せ持っており、ホラーが苦手な自分が唯一自分から遊びたいと積極的に思う(でも当然ビビり倒す)作品であるため今作も意気揚々とプレイしたのである。
(なお今作は周回プレイが前提と思われる作品であるが自分はまだ2週目の途中であり、ストーリーの感想は現時点でのものである)

今作はアクション難度が高めとの前情報を聞いていたが、サイレントヒルのファンとして難易度は“難関”でプレイすることにした。
外伝的な今作では町が霧に包まれた表世界と謎の神社仏閣の裏世界を行き来することとなる。これまでの作品では同じ場所だが様相が違うという表現だったのに対して表世界と裏世界が完全に異なる点に違和感を感じたり、ストーリーとしても今回は生き残ること以外の目的が示されず、「これはサイレントヒルなのか?」と頭の片隅で思いつつプレイしていた。

しかし、かなり個人的な理由なのだがその違和感をねじ伏せる感情が大部分を通してあった。
怒りである。
ある敵がとにかく 強い 強すぎる。
それは這いつくばりながら襲ってくる、犬っぽさのある敵なのだが、まずモーションが強い。腕を振り上げる攻撃のリーチがものすごい。身長以上の間をとっていてもグッとふみこんできて爪先がビュッとかすめる。かなり痛い。しかもそれで終わらずコンボが決まる。下手すると難易度もあってそのまま即死する。
さらに今作は昭和の町が舞台なので、これまでの海外のような広く整った道ではなく、狭い路地裏で乱雑に置かれた箱などが邪魔。そのため、よけようとしても壁や物にすぐに引っかかりタコ殴りに...

なんだそれ...卑劣な奴め...そっちは捨て身でかかれるけどこっちはやられたらだいぶ前のセーブポイントからやりなおされるんだぞ...
ゆ゛る゛せ゛ん゛!!!

そして恐ろしいことにこの犬男(勝手に命名)はあろうことか雑魚敵。いたるところに出てくるのである。しかも、曲がり角から、後ろから、挙句の果てに犬男2人で挟み撃ち。
あまりにもひどい仕打ちにプレイ中に出てくるたびに「また出たな?!許さん!!」と怒りの感情を爆発させながら死闘を繰り広げるようになってしまった。

しかし、偶然なのだがそれが一つの不思議な感覚を生むようになったのだ。それは雛子の立ち位置が曖昧になっているという感覚である。
本作は主人公である雛子がプレイ中もよくしゃべるのだが、物語が進むにつれ、倒した敵に怒りの言葉をぶつけるようになるのである。まさに自分の言葉を代弁しているのである。”相棒”という表現がゲーム内で多分に出てくるのだが、雛子がまさに自分の相棒のように一緒にいてくれている感覚があり、プレイするモチベーションをものすごく支えてくれていた。
しかし、自分の怒りを雛子が直接敵にぶつけている、そのシンクロ感が次第にまるで雛子が元々自分のアバターとして作ったものであるようにも感じさせてくる。雛子は雛子の考えがあって行動しているはず。でも戦闘は自分のスタイルで動いている。ならこの怒りは誰の怒り…?
通常主人公が確固とした自我を持っている場合、プレイヤーはそれを見守るもしくは導く第三者というスタンスでプレイをすると思われるが、この作品の場合は違った。ふと気づくと自分は雛子として敵と向き合い、倒した時には心からセリフを吐き捨てているのであった。それではそこにいるのは雛子なのだろうか...それとも自分がいるのだろうか...?

ネタバレになるため深くは語らないが、思いがけずもこの不安定な心理状況はストーリーの根幹にもつながる部分があったと感じている。1週目をクリアしたときには誰に自分を重ねていたのかと非常に印象に残ったのである。そして、冒頭に述べた違和感も終盤で意味を持ち始め、個人の結論として
「これは、確かにサイレントヒルだった...」
と思ったのであった。偶然も含めて全部がサイレントヒルに収束したのである。もうこれは My GOTY 決定だ。

毎回人間の内面を深いところまで切り出してくるサイレントヒルシリーズの最新作だが、今作も非常に満足感のあるものだった。自分特有の経験もあったもののストーリー単体でも終盤の展開には引き込まれるものがあった今作は、間違いなく今年のMy GOTYである。
念のため断ると当然難易度を変えることでスムーズにゲームを進められるので初心者も安心してほしい。ストーリーの良さについて今回あまり伝えられていないが、なぜ雛子がこんなふうに変わっていったのか、精神と感情を揺さぶってくる今作が気になった方はぜひプレイしてみてほしい。そんな重厚さを持つ素晴らしい一作だった。

アップロードしたフォト

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美しくも恐ろしいサイレントヒルの世界感

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現実と非現実の境界が溶けていく

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レビューの敵ではないけれども、謎解きを力業で解こうとしたせいで、これまた袋叩きにあっている現場

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ゲーム概要

山々に囲まれた日本の田舎町・戎ヶ丘に住む主人公の高校生・深水雛子(しみず ひなこ)。彼女の日常は、謎の白い「バケモノ」によって突如崩れ去った。変り果てた見慣れた町を探索し、戦い、謎を解きながら、やがて彼女はある「結末」にたどり着く。
from Steam

プロモーションビデオ等


ベスト叫んだ賞
都市伝説解体センター
人は想像する生き物。
そして想像できないものを受け入れたがらない生き物である。
理解できない事象に対して勝手な理解で名前を与え、知ったものとする。
それが人の性分である。

人は想像する生き物。
そして不都合なものには目をつぶろうとする生き物である。
違和感があっても安易な憶測に飛びつき、いつしかそれが事実であると信じ込むのである。
それが人の驕りである。

都市伝説解体センターはまことしやかに噂される都市伝説絡みの事件の調査を行う、というストーリーを自分で操作しながら読み進めていくノベルゲームに近いゲームシステムの作品である。
この作品の特徴としては細かく推理パートが挟まれるのだが、これがプレイヤーが物語の内容をきちんと理解しながら読み進めていける誘導灯の役割を果たしている。自分が主体的に事件を紐解いていく感覚を与えてくれるのである。一方で、誰でもエンディングまで辿り着けることに重きを置いたとの制作陣のコメントがあるように推理でつまづいてもまるでヒントをささやかれているようなギミックでサポートがあるため集中を途切れさせることなくプレイすることができるのである。

ストーリーもかなり個性的な3人が中心となって進むのだが自分は終盤の頃には全員好きになってしまうほどいいキャラとなっている。テキスト以外はドット絵でできており、立ち絵も常に動いているのが活き活きとしていてずっと見ていても飽きないのも魅力である。

このため、この作品はドット絵特有の昔ながらの温かみを出しつつも今の時代に合わせたプレイのしやすさを備え、その中で都市伝説、そしてSNSという現代的な闇を扱っている作品となっているのである。


※レビュー文の一部が削除されてます


それからというもの、私は数日間、都市伝説解体センターの実況動画を漁っていた。SNSで感想を貪っていた。
だが私はこれを誰にも話すこともできない。話したいが口にすることができない。もう無邪気にゲームをプレイしてた頃には戻れないのだ。私は境界を越えてしまったのだ。だが、それでもだ、都市伝説解体センターを私は求めている。そして、かろうじて話せる上っ面を語っているのだ。
都市伝説とは語られることそのものだ。正しいも正しくないも関係ない。詳細もいらない。こういうことがあった、そのような表層を覆う皮さえあれば都市伝説は足を得て、歩きだせるのだ。都市伝説解体センターはそれ自体が都市伝説なのだ。そして、私はその一部とされたのだ。

人は勝手に想像し結論づけようとする。
もし、想像の影に隠れた真実を求めるならば、人は受け入れなければならない。目をつぶってはいけない。
もし、そうしたならば、きっと想像すらしなかった真実に声を上げるだろう。


「はぁぁぁぁっっt?!?!えっっっっっt???????」

それが私が都市伝説に取り込まれる直前の叫び声だった。本当にベスト叫び声だった。終
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ゲーム概要

怪異を解き明かすミステリーアドベンチャー
from マイニンテンドーストア

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