本作は、アメリカでは「ドラゴンクエスト」並に大人気なレトロゲームをグラフィックやUIをよりリッチにリメイクしたゲームである。(原作は1973年のApple2というのだから、すげー昔である)アメリカ合衆国のマニフェスト・ディスティニーで推し進められた民族大移動「オレゴン・トレイル」を体験するRPGだ。
プレイヤーはオレゴン・トレイルに挑む開拓者となり、幌馬車にたくさんの家財と食料を積んで、全長3,000マイルのオレゴン・トレイルを、歩いて、西へ西へと進んでいく。別段、モンスターや野盗は現れない。敵を倒してレベルアップ、なんてこともない。
その代わり、そんなものがいなくても、「歩いて、誰もいない、土地を旅する」というのがいかに危険で心細いものなのか、というのを感じるゲームだ。
馬車が壊れ、その修理をしている途中に足を挟んで骨折し、骨折したたまま歩き続けなければならないこともある。朗らかだったひとが、度重なる苦難の結果、神経症を患ってしまうこともある。馬車が川を渡りきれず、家財の一切を失うこともある。衛生状態が悪くなれば、パーティの誰かが赤痢にかかり、それがパーティ内で蔓延し、ひとりが病死し、残り三人で旅を続けなければならないこともある。
このゲームの恐ろしいところは、そんな全滅のような状態であっても、生きている限りゲームが続くことだ。魔法で死者を蘇らすことも出来ないし、病気を即座に前回も出来ないし、失った家財も戻ってはこない。すべてを捨ててオレゴン・トレイルを西へ行くこと決めたからには、戻ることができない事情がある。足が折れても、家財を失っても、心を病んでも、生きている以上は進んでいかなければならないのだ。
これは、アメリカ合衆国の歴史にあったこと。けれど、現代を生きる私たちでさえも、そうやって生きているもんだと思う。ゲームと現実の大きな違いは、リセットがあるから、ではない。本来なら、ゲームオーバーになるような事態が起こっても、人生は続くことだ。
そのなかで、どうにか人として生きるための七転八倒する。それが中年に差し掛かった私の人生訓だったりする。本作が、いま、現代の日本でやったとしても面白いのは、その「最悪な事態が起こっても終わらない」ところをゲームとして体験させるところにある。
ゲームとしては、簡単な部類であるが、旅を通して、たくさんのことを感じられるゲームである。
アメリカの近代史に興味があったりするのであれば、ぜひとも本作に触れてみると良いと思う。
プレイ時間は、1プレイ(オレゴン・トレイルを歩ききるまで)おおよそ5時間程度。このほか、シナリオモードなども盛りだくさんで、チュートリアルも親切なので、ゲームをする時間がないな、という方こそ、触ってみたら良いと思う。