みんなのGOTY(ゲーム別)

新着順 Game of the Year 2025 ゲーム別

Fit Boxing 3 -Your パーソナルトレーナー-

Game of the Year 2025
ゆーが さん
Fit Boxing 3 -Your パーソナルトレーナー-
私と「Fit Boxing 3」との出会いは、偶然だった。 ずっと積みゲーにしていた「リングフィットアドベンチャー」を2年越しにクリアし、何も恐れるものが無くなったこと。 会社の上司がボクシング好きで、話を聞いているうちにボクシングに興味をもったこと。 2つのタイミングが偶然にも重なり、勢いに任せてゲームを購入した。その偶然が、私に全く新しい景色を見せてくれた。 このゲームを一言で表すなら「音楽に合わせてボクササイズを行うフィットネスゲーム」である。 最大の魅力は、豪華声優陣によるフルボイスのコーチング。 胡蝶しのぶ、キャプテン・アメリカ、渚カヲル、流川楓、ソリッドスネークetc、、、 そんな素敵ボイスに叱咤激励されながら、ボクササイズを体験できる。 ルールは簡単。「Joy-Conを握り、リズムに合わせてパンチを繰り出す」 ただそれだけ。 のはずが、「あれ?なんか気持ち悪い。。」 音楽とパンチが微妙に噛み合わないのだ。 ゲーム内のパンチの当たり判定は「拳が止まった瞬間」に設定されている。つまり「腕を伸ばし切った時」にパンチが当たる仕様だ。 しかし「パンチを出したい」と考えてから「パンチの到達」までに時間差が発生する。このわずかなギャップが曲者で、音楽と微妙にズレてしまう。 さらに、パンチの種類によっても、この時間差が異なる。 例えば「ジャブ」と「ストレート」では、パンチの軌道・距離が違う。 ストレートはジャブより距離が長いため、より速い速度でパンチを繰り出す必要がある。 思っていたより難しい。一歩ずつエクササイズを進めるも、どうもしっくりこない。 妻から「なんかフォームがボクシングっぽくないんだよね…」という、ぼんやりした手厳しい指摘が入る。 悔しいので、何か参考になる情報はないかとネットを探す。 結果、たどり着いたのは「実際のボクシングの入門動画」だった。 動画では、プロボクサーや元世界チャンピオンが、初心者向けに「パンチの打ち方」を丁寧に教えてくれる。私は食い入るように動画を漁り始めた。 「なるほど、パンチを繰り出す時は脇を締めるのか」 「速いパンチを打つには、力を抜いて、速く拳を戻すことが重要なのか」 「そもそも拳の握り方はどうするんだっけ?」 ゲーム中に湧いてくる疑問を一つずつ解決していった。 すると、あることに気づく。パンチには一連のコンビーネーションがあるのだ。 最も簡単なものは「左ジャブ→右ストレート→左フック」の連続パンチである。 この順番には、きちんとした理由がある。 「左ジャブの打ち終わり」は「右ストレートを打つのに最適な体勢」であり、「右ストレートの打ち終わり」は「左フックを打つのに最適な体勢」なのだ。 これがコンビネーション。通称「コンボ」と呼ばれるものだ。 ゲームの世界では、特定の「繋がる攻撃」をタイミング良く繰り出すことを「コンボ」と呼ぶ。 「パリング(パーリング)」 相手のパンチが顔に当たる直前に、手でわずかに触れて軌道をそらし、ダメージを防ぐボクシングの防御技術。 ゲーム上で、相手のモーションに即座に反応して攻撃を弾き返す「パリィ」は、実はここから来ていた。 私達が何気なく使っている「コンボ」や「パリィ」は、実際の格闘技で使われているテクニックであり、それらをゲームプレイの中に見事に落とし込んだ画期的なシステムだった。 ゲームと現実世界は地続きだったのだ。 日常の中に潜む真理に気付いた時、私の心は打ち震えた。 すぐに通販で専用のコントローラーグリップを購入した。Joy-Conに装着することで、拳をしっかり握り込むことができ、一層の没入感を得られる。 気がつけば、youtubeのアルゴリズムにより、私へのオススメ動画はボクシングで埋め尽くされていた。 2025年12月20日(土) 私は後楽園ホールの観覧席にいた。 数メートル先の距離で繰り広げられる、若きプロボクサー達の「拳闘」に胸を躍らせ、上司と共に彼らに声援を送っていた。 プロボクシングの全日本新人王が決定したその日。私のGame Of The Yearも決定した。 ゲーマーと後楽園ホール。決して交わらなかったであろう2つの世界線。 これらを繋げ、私の人生に新しい風を吹き込んだのは、紛れもなく「Fit Boxing 3」だった。 生の試合を観戦したことで、自分がリングに上がった姿をイメージして、一層ゲームを楽しめるようになった。 このゲームに明確なゴールは存在しない。 それでも、理想のパンチを追い求め、私は今日もJoy-Conに専用グリップを装着している。