グァーガーーー〜 ガンガンガンガン ギー ガィンガィンガィン
……バリエーション豊かな効果音。一体いくつのパターンがあるんだ?
私は狭くて明るい空洞の中に居た。仰向けのまま決して「動いてはいけない」と命令された。目を瞑り、この空洞に入るキッカケになった日のことを思い返す。ここから出たい。一刻も早く。
ーーー今年の夏は酷かった。雨も降らず猛烈な暑さで、こぼれた弱音すらも枯れる酷暑だった。
額から落ちる汗。真昼の冷たい汗……痛たたたた。そう、腰を。私は腰をやったのだ。布団の上で「動いていけない」と自分に言い聞かせて横たわっている。わかるだろう、サガットステージの背景を思い浮かべてほしい。ただし仏とは真逆の表情。股には枕を挟んでいる…これが腰には、やさしい体勢らしい。
なぜ? 部屋を掃除するためカーペットをはごうと屈んだ時だった。あーーー、いや、やめておこう。ここから腰を痛めた描写を事細かく書いたところで面白いことなんて一つもない。エビチリの食レポで「プリプリのエビおいし〜」くらい定番な展開だ!それ以上でもそれ以下でもない「腰やっちゃったんだから!」それでいいだろう。私は横たわり その日は、ひたすらネトフリのホラー映画を観ていた。腰やっちゃった奴には絶対的安全な場所から観るホラー映画は最高のエンタメだ。私は一日中横になって映画を観たり、もちろんゲームもしていたさ。腰をやっちゃったんだからという無敵の建前がある。一日中だ。一日中寝て食べてエンタメを貪り過ごす。家族の誰からも文句は言われない「腰やっちゃったんだから」という無敵の建前。この建前を築く前に謝罪という基礎固めをしっかりした。本当であれば、この日は家族とサントピアワールド(遊園地)に行こうと計画していたのだ……そこは猛烈に謝罪をしたさ。猛烈な基礎固めだ。その基礎の上に私は横たわりエンタメを貪っていた。許してほしいとは言わないが、許してほしい。
「Assemble with care」
自然発生か誰かが仕掛けたか世の中には流行がある。例えば2010年代前半ゲームの世界では高難易度で死んで覚える死にゲーという言葉が生まれたり、2010年代後半からは武器防具を拾い集め徐々に戦えるフィールドも狭くなり自ずと熾烈な戦いとなるバトロワ系という新たなルールが生まれた。他にも例を挙げればキリが無いほど流行は生まれてきた……2025年はどうだっただろうか?Switch2発売、モンハン新作発売、サイレントヒルfが話題を呼び、エクスペディション33が躍進した……その裏で隠れたゲームの流行はご存知か? はて。隠れた流行……お前が気になっているから、よく目に入っただけでは?…という助言は、ありがたく私の内ポケットにしまっておこう。現在進行形でこの隠れたゲームジャンルは増え続いている。テレビ朝日・東映制作刑事ドラマ風に言うと「かくれゲーム流行派」だ。
まず一つ目は、何が出るかな穴掘りゲー。これは穴を一人で、または複数人でひたすら掘り続けるジャンルだ。多くの人がゲームタイトルさえパッと思いつかないが、サムネやプレイ画面はよく見た覚えがあるのではないか。そしてもう一つは、壊れた物を直す修理ゲー。パズルゲームに近いジャンルかもしれない。穴を掘るゲームはメジャーになりつつあるジャンルなので、穴掘りゲーを深掘りたい気持ちもある……ただ今回は、無敵の建前で謝罪という基礎の上に横たわりスマホで遊んだ"修理ゲーム"を紹介したい。
ーーーゲームタイトル「Assemble with care」
Assemble は組み立てる。with care 注意して、慎重に、又は丁寧に心を込めて。
私の腰は今、繊細でデリケートだ。少しでも気を抜けば激痛が走る。取扱注意のコワレモノ。慎重に遊びましょう。Play game with careだ。
このゲームは名作モニュメントバレーを開発したスタジオの制作。世界を旅しながらアンティークを修理している主人公マリアとそこに訪れるお客さんとの物語。壊れたモノを修理することで物語が展開される。私は全てのゲームの中の修理という作業(システム)が大好きだ。フォールアウト・ニューベガスでは武器と防具に耐久値があり、使い続けるなら修理をしなければならない。プレイヤーによっては、そこに煩わしさを感じてしまうようだが 荒廃した世界で道具を修理しながらサバイバルすることは、主人公に憑依しゲームの中に浸りたいプレイスタイルの自分にはピッタリだ。愛着を持った武器を整備しカスタムしたいのだ。小さい頃から大人になった今でも修理屋さんを尊敬し憧れを持っている。壊れたモノを専用の工具でテキパキと分解し修理をする。ナットを締める指先は真っ黒だ。時々愚痴りながらも「できたぞ、坊主。もう壊すんじゃねぇぞ」……なーんて言う渋いおやじ。最高にカッコイイじゃんね。
「Assemble with care」(アセンブルウィズケア)というゲームは、この憧れに応えてくれる。分解して原因を見つけ部品を取り替え元の状態に近付ける。実にシンプルで良い。この分解する動作もドライバーでネジを回すという、スマホゲームとしてちょうど良い触り心地で分解っぽい遊びを味合わせてくれる。それに全ての効果音が心地よく、分解も組み立ても効果音の心地良さと相まりとにかく軽やかで触っていて楽しいのだ。故障の原因を見つける際も詰まる場面がなく、分解しながら「ここをあーしてこーすれば良いんだな…」と、ほどよく頭を使わせてくれる。気分はベテランの修理屋さんだ。
この気持ちにさせてくれるだけでも私は満足なのだが、直してほしいと持ってきた大切なモノを修理することにより、お客さんの歯車もしくは主人公の歯車、そしてその両方が噛み合い物語がカタカタと回り出す。いいゲームだ。
クリアまで夢中にカチャカチャと分解して組み立てるを繰り返す。私は、腰をやっちゃって ずーっと横たわったままだが、ゲームの中では壊れたモノをバッチリ修理しちゃうんだぜ!すごいだろっ
……
ーーー
グァーガーーー〜 ガンガンガンガン ギー ガィンガィンガィン……
「はい。お疲れ様でした〜 では、これからねMRIの検査データ出しますんでね それを持って整形外科に行ってください」
ーーー
「ん〜、なるほど。腰やっちゃってますね!しばらく薬で様子見ましょう。Assemble with careしますからね。お大事に^_^」