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Factorioとは…って説明いらないよね笑
 このゲームで素晴らしいのは、きちんとデザインされた「起伏のあるゲーム体験」を意識しているところです。
 工場ゲームは概ねクリッカーゲームとの要素の相似が多く、クリッカーゲームというのは一生遊べる無限プチプチみたいな方向に割り振ることが多いんだけど、それとは全然違うクラシックなゲーム体験を意識している。
 ゲームって音楽みたいなもんだと思うんだけど、クリッカーは環境音楽とかテクノって感じで、クラシックなゲームというのはオーケストラってことね。
 後発の工場ゲームにはこの点がゆるいのが多くて、概ねやってりゃ終わるにすることで買った人をそこそこ楽しませるものを作ろうとしている。
 Factorioはそのままの設定(つまり敵あり)だと詰むことも生まれる危険なゲームなんだけど、そういう部分は「要らない・面白くない」として後発には取り込まれていない要素になっている…が、そうではないという話です。
 詰んで、もう面倒くさいなと思いながらゼロからやりなおす、それも大事な体験の一部で、そのときプレイヤーは転生モノの主人公のような全能感に浸れるわけです。とはいえその全能感は自分が確実にモノにした本当の知識によるものでもあるので、スキルの向上が実感になるのがうれしい。

 では、まずバニラのFactorioについて。
 このゲームは4Xの要素を持ちかけてやめた工場ゲームというのが一番適切な言い方になるかもしれない。
 すごくいいところはやはりチェコで作られた手製の表現だろう。はっきりいって、この良さをプレイヤーとしてはわかってるのに作るときに理解していないから後発はただのゲームに成り下がっていると考える。どうでもよさそうにみえて、やっぱりインサータの動き・モーション、そして、本当にそこにあるオブジェクトを掴んで離している、そういう部分が最高にいい。
 このゲームは多くの工場ゲームがデータに引き寄せられる中、実存かデータかでいうと実存なんだよな。それは当然4Xゲーム指向であることとも関わっていて、やはりゲームデザインというのはプレイヤーをおもてなししたりどう思わせたりするかだけではなくて、自発的な価値観の発信のためにあると考えるとそれは本質はアートなのではないかと思う。

 全体として完成させるにあたって粗さを無理やり乗り越えたゲームだ。汚染による原住民への刺激と対策はソロゲームじゃやってられないくらい忙しいし、使わなくてもいいウランと原子力、せっかく速さアップ等の効果あるけどそれより体にバネ仕込んだほうが全然早い装飾以上にならないコンクリート床…クリアだけなら知らなくていい要素は多い。
 それでもこのゲームが完璧だなと思うのは、鉄と銅に始まって、鉄と銅に終わる。その中に中間素材を拡張させるために既存を拡張するフェーズや、まったく新しいラインを組ませるフェーズ、アップグレードによってもっと古いラインを再構築するフェーズ、そして規模の拡大によって遠くへ遠征するフェーズ…やるごとに発見や違う面白さを感じるようになっていて、共通するのは進めば進むほど手が足りなくなって、手が足りないこと自体が楽しい。プレイヤーはいつしか自分が制御できる限界を超えるものを手にしている。それを扱う快感。

 ただ、このバニラのFactorioは多分作者の思ってるくらいの3分の1くらいのゲームになってしまっているのだろう。本来、ランダムジェネレーションされるマップにワクワクさせられるものを感じるが結局、ほとんど鉄・銅・原油の産地だけでそこを繋げば別にどう生成したといっても味は同じ、単にそこまで電線と鉄道を引くだけで、拡大の期待はすぐになくなる。

 そこでこのSPACE AGE DLCだ。
 宇宙船を飛ばしたその後をテーマにしたDLCはFactorioの完全版だ。
 元々、Space Explotation(以下SE)というMODがあり、同じく宇宙船を飛ばした後を拡張するMODだが、このスタッフをそのまま丸抱えして作ったとのことだ。
 SEは純然たるFactorioの拡張ではあったが、新しい体験といえる部分は少なかった。新規のレシピや発見は縦方向への拡張にすぎず、宇宙軌道や宇宙船の体験は新しいが最終的にはバニラの延長をすごい規模でやらせるだけだったと思う。それはそれでFactoriers CUSTOM(なにそれ)としてはよいものではあったが…。
 それが本作は、横方向への規模の拡大がとにかくすごい。
 宇宙船の設計は明確に楽しい。
 Warptorio2という何度もゼロから作るMODがあったが、この宇宙船のシステムはそれに近い。ゼロベースかつ、入力は隕石だけ。これで何を作るか?何をさせるか?という軽いパズルになっている。
 こういうパズルは得てして”望まれないミニゲーム”となりがちだが、本作はそうはならない。研究によってどんどんアップデートされるルールにカーゴ搭載量や推進力、また「やればわかる」要素満載でまったくもってゲーム本編の一部として溶け込んでいる。

 広がる星系の他惑星はどれもルールの違いを強調している。それらは初期Factorioで作った定型の進行(石炭で発電して、炉で鉄と銅を作ることから始める…)を完全に壊しにかかっていて、本当に素晴らしい。まったく新しい体験がそれぞれにできる。さらにゲームデザインとしてもよいのは、他星系は”進行”を解き明かしさえすればFactorio初期の惑星(ナウヴィス)では考えられない莫大な生産力を手にすることになる。

 ユニークな惑星がたくさんあって楽しいね…そう、ここで終わっても十分面白かったはずだが、それだとただのDLCである…(?)。これはただのDLCではない!Factorio2だ3だと思わせるほどの要素がこれらを繋ぐネットワークの構築にある。
 ユニークな惑星にはそれぞれ特産品があり、特産品はその惑星でしか作れない。この特産品はとても便利だったり、研究に必須だったりするので他の惑星に持ち込む必要がある…。そう、ここで宇宙船だ。
 もともとのFactorioでは資源を繋ぐだけのネットワークと化してしまった駅などの物流要素がここに来て、本来の形で楽しめるのだ。
 これが、一から設計した要素などではなくゲームデザインとしてはルールを少し足しただけというのが美しすぎる。
 各惑星1つ1つは、ミニゲーム以上本編未満である。しかし、それらを宇宙船で結び、惑星同士で入出力をさせることにより、プレイヤーは世界の物流の有機的な関係を築くことになる。この瞬間、ナウヴィスだけで終わってた頃のFactorioでは味わったことがない、本当に宇宙規模にも感じる圧倒的なゲームの大きさ(物理的という意味ではない)を体験することになるのだ。
 ゲーム体験としてこれより大きなものを扱っているというのは味わったことがないし、ゲームデザインとしてもそういった感動が何度か続いてそのまま終わりまで走り抜けるようになっているのが美しいと思う。

 ただし、これは欠点とは言わないが、宇宙船の運行なども含めて相当シビアだ。全面を一人で監督するには規模が大きすぎる。失敗したら本当におじゃんになるようなタイミングもいくつかある。Factorioをある程度知り尽くしたことが前提であるのは間違いない。
 なんとなくDLCではなくて、Factorioの酸いも甘いも嚙み分けた末の世界だということは承知で挑んでほしい。挑む価値はあるが、挑むだけのハードルもある。
 それでもこのゲームは、今世紀で最大で最高のゲームの一つであることには間違いない。
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HYPERDEMON、それは完璧なゲームのひとつだ。
今の流行、つまり三択のパワーアップとか、ランダム引きとか、アンロック、
そういう引き伸ばしは一切ない。
ハンドスピナーぐらいまで究極に単純なゲームだ。

しかしそこには
もっともフェティッシュな画面と、
もっとも自由が効く機動と、
もっとも凶悪な敵が牙を剥く。

これを完成度と言わずしてなんと言おうか。
そのゲームの美しさは、鑑賞者を選ぶ。
つまりはマッターホルンからの日の出を見れるのは登頂したもののみということだ。

ゲームが誰にでもできる遊びになりはてたのはいつからだっただろう。
死にゲーと呼ばれるほとんどのゲームはその実、必ず突破が可能なようにも作られている。
格闘ゲームに逆転が可能なゲージ技がいつまでもあるのはなぜか。実力を紛らわせるためだけである。
そういった幻想はこのゲームには一切ない。
プレイスキルだけが絶対の世界で、
運にすら頼れない現実の中で、
それでも自分に対して保証のないリトライを課すことができるか。

僕は今年、80時間をかけてこのゲームの一定のところまで達することができた。
だから今年のGOTY。
最近PVPモードも実装されたしね。
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