ループ1回目

新米宇宙飛行士の僕は焚き火の前で目が覚めた。
これから始まる長い長い旅の相棒となる宇宙船は既に整備済だ。
博物館の館長から教えてもらった発射コードを頭に叩き込み、一通り見学を済ませた頃、一際目立つ場所に展示されている彫像の眼が一瞬光るのを僕は目にした。

「今のは一体なんだったんだ…?」

疑問を抱いたまま僕は宇宙船に乗り込み、拙い操縦で近くの惑星である『脆い空洞』へ降り立った。
シグナルスコープに反応があり、あたりを探索すると謎の脱出ポッドを発見した。
救急信号が発せられているのはここで間違いないが、人の姿はない。
ポッドから伸びているコードの先を伝っていくと、我々の文明では考えられない程巨大な宇宙船の残骸を発見。
船内から地下へと続くハッチを開け、足場に気をつけながら崖を下っていく。
手元の翻訳機で壁に刻まれた文字を解読すると、以前この地に降り立った探索者(Nomai)達の言語だった。
途中、解読した文字にはこう書かれていた。

「ここは火山月による落石が多く危険な為、北の氷山を目指す。」

おそらく仲間宛に書いたメモだろうが、当然この辺りには僕ただ一人しかいない。
北の氷山には何かがある。
根拠一つない、ただの好奇心から北へ進むことを決めた。

『脆い空洞』という名前だけあって、この惑星の地面にはところどころ裂け目が開いており、今にも崩れ落ちそうだ。
隙間を覗いたその先の空間はひどく歪んでおり、中心部にはブラックホールが確認できた。
絶対に落ちてはならない。こんなところで宇宙飛行士人生が終わってたまるか。
そんなことを考えながら北の方角へ進んでいると、何やら奇妙な鉱石を見つけた。
辺り一面に点在するその鉱石は紫色にぼんやり発光していて、付近には重力場が発生している。
その重力の向きを見極めることで、壁や天井を伝って歩くことに成功した。
本当の地面がどこなのか分からなくなりつつも先に進んでいったが、ついには行き止まりにぶつかってしまった。
自分の身長と同じくらいの壁の向こうには氷山らしきものがかすかに見える。
自分の跳躍力を信じて無理やり飛び越えようとしたが、あっけなく失敗。
勢い余って奈落へ落ち、惑星の中心にあるブラックホールに飲み込まれてしまった。

走馬灯を眺める間もなく飲み込まれたその先は、見覚えのない宇宙空間だった。
幸い、宇宙服に搭載されている船外活動用のジェットパックを使うことで、手の届く衛星まで辿り着くことができた。
翻訳機によると、ここはホワイトホールステーションという名前の建造物で、自分と同じようにうっかりブラックホールに落ちてしまった愚かな探索者への救済として作られた場所らしい。
機構を動かすことで先程まで歩いていた『脆い空洞』へ難なくワープすることができた。
しかし、同じ星とはいえ元いた場所とは全く異なる場所に降り立ってしまい、宇宙船も見当たらない。
あてもなく探索しているうちに、太陽がみるみる赤くなっていく。
やがてまばゆい光とともに大爆発を起こし、一度目の探索は終了した。

これは、今後も繰り返される“22分”という太陽系消滅までのタイムループの中で起こった、たった一つのゲーム体験であり、次の瞬間、僕は再び焚き火の前で目を覚ますことになる。

次の22分間で、あなただったら何をする?
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