私は今まで最高のゲーム体験を形容する言葉に、"コントローラから手が離せなくなる" という表現をよく用いてきたが、Sea of Starsはその表現に加えて、"コントローラから手を離していても楽しい" という言葉が相応しいと感じる。 隅から隅まで描き込まれた美麗なドット絵によるキャラクターや風景、これから待ち受ける大冒険を感じさせる俯瞰視点の広大なフィールドマップは、眺めているだけでも充実した時間を提供してくれる。私と同じく、SFC後期からPS初期にかけてのあの頃のRPGに熱を入れて遊んだ方々ならば、同じ感情が強く湧き出てくるのではないだろうか。

この見ているだけで充実感のあるドットグラフィックの世界を、自由にキャラクターを動かして操作できるのだから、このゲームが最高でない訳がない。プレイヤーの行きたいところに直感的に行ける自由度の高い操作は、ストレスを感じず非常に良かった。街やダンジョンの多少の段差はスイスイと越えることができ、マップの隅々まで探索する楽しさにも直結している。

キャラクターの自由度の高い移動体験に加えて、戦闘時の操作感も私にとって非常に楽しいシステムであった。戦闘の操作は単純なコマンドバトルではなく、プレイヤーがタイミング良くボタン操作をすることによって、戦闘が有利に運ぶシステムとなっている。キャラクターの攻撃や敵からの攻撃に合わせてタイミング良くボタンを押すことで、追加の攻撃を発生させたり、敵からのダメージを軽減したりできるシステムだ。そのため、戦闘中は気が抜けずゲーム画面へ自ずと集中することになる。アクションゲームにおけるジャストガード、パリィといった、タイミングを求められる操作が大好きなタイプのプレイヤーは大いに楽しめる戦闘システムであろう。ちなみに必ずこのシステムをフル活用しないと攻略ができないかというと、そうではない。このシステムで遊んでもよいし、遊ばなくてもよい、という選択ができる点も、Sea of Starsの良いところである。

この戦闘システムは決して目新しいものではないが、戦闘中の他要素と相まってゲームへの深い没入感を得られるのが、私のお気に入りのポイントである。タイミングよくボタンを押す以外に、敵の複数の弱点を決められたターン以内で攻撃する手段を考えたり、キャラクターの攻撃によって回復するMPの管理を考えたり...と、プレイヤーの思考を巡らせる要素の絡み合いを制し、敵を上手く倒せたときの達成感はひとしおである。

ゲームへの没入感を感じる要素として、BGMに関しても触れておきたい。特にボスとの戦闘曲「Encounter Elite」は、私が歴代プレイしてきたゲームのボス曲の中でも1, 2を争うほどに最高であった。合間に入るギターのグリッサンドと、そのサウンドから展開される曲調がとても気に入っていて、ボス曲らしい疾走感を演出しているように感じる。他にも魅力的なBGMが至るところで流れるため、ゲーム音楽が好きという方はぜひ一聴をおすすめしたい。ゲーム内でのアレンジの数が多い点も魅力的で、宿屋で流れる音楽隊風のアレンジを聴きながら興じるミニゲーム「ホイールズ」は、控えめに言っても最高である。ホイールズはアナログゲーム好きには堪らないビジュアルとゲーム性となっているので、そういった方々には本編そっちのけでハマること間違いなしだろう。ホイールズ単体を切り出して、追加で対人戦ができるようにしたものを別ゲーとして出してくれないかと願うばかりだ。

最後に、ストーリーについては核心を避けて概要について軽く触れておく。ストーリーは冒険や友情が主テーマの王道中の王道で、魅力的なキャラクター達が躍動するストーリーである。一方、王道ストーリーではあるが、ストーリーの細かい文脈までを追い切るには、多少のプレイヤーの解釈も必要になる、というのが私の印象である。ゲーム中で得られるアイテムから、ストーリーの補足として得られる断片的な情報を得て、物語を解釈する。そういった体験が好きなプレイヤーには是非におすすめをしたいタイトルである。
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