ちょこまかと動くかわらしいドット絵。妙にリアルっぽい動きをする魚たち。ストーリーへの引き込み方や好奇心をくすぐられる海中探索、終盤まで小出しにされる新要素の数々など、最後まで飽きることなくプレイ意欲を高めてくれた『デイヴ・ザ・ダイバー』。

 久々に、ストーリークリア後も自ら目標を作ってやりこみプレイをするほど楽しめた作品。全体のボリュームも長すぎず短すぎずでちょうど良い。寿司屋パートでは定番のネタから斬新なネタまで想像以上にバリエーションが豊富。最終的にお店に出すネタは利益率の高いものに絞られてしまうが、新しい魚をGETしたときの「この魚はどんな寿司になるのだろうか」というワクワク感がたまらない。

 登場キャラは皆クセが強く、なぜか中年おじさん率がとても高いところも本作のユニークさの一つになっている。(嫌いじゃない) 寿司職人”バンチョ”の無駄にかっこいい大げさな調理演出には思わず笑ってしまうが、その清々しいまでの振り切れ方が最高に良い。

 魚は海に潜ってフックショット的な「銛(モリ)」で突いて捕るのだが、簡単すぎず難しすぎない絶妙なバランスの難易度。アクションの手触りの良さが特に良い。釣りでは味わえない、魚たちとの直接的な駆け引きを楽しめる。酸素ボンベの残量がそのまま主人公の体力となっている点も、説得力のあるスマートな設計。また、銛自体に強化段階や属性要素があったりと、わかりやすい成長要素もモチベーションが上がる。オープンワールド的な自由度はないが、その分プレイヤーを引き込んでいく計算し尽くされた”面白い、楽しい”が詰まっている。テンポよく進むストーリーや解禁要素も相まり、ストレスをほとんど感じることなく、快適に楽しめた。

 また、徐々に温度感が上がっていくストーリーにも引き込まれた。少々気になったのは、一部の登場人物たちを深堀りした話がほとんどないことだ。この点については、どこかの開発者インタビュー記事で、今後スピンオフ的な作品で主人公やキャラたちの深堀りをしていきたいという構想があると読んだことがある。続編を匂わせる終わり方だったことからも、今後の展開が気になっている。

 他には、調味料のメイン調達方法である「スタッフの派遣のやり方」も少し気なった。チュートリアルでは「他にこういうこともできるよ」みたいな感じで割とあっさり流されていたように思う。そのため、”派遣”というキーワードは知っていたが、何が得られるのか、どうやって派遣するのか、という使い方までは覚えておらず、結局攻略サイトで調べるまで分からなかった。今思えば、まだあまり慣れていない序盤からどんどん新要素が出てくることに圧倒され、私の頭が一瞬ショートした隙に入ってきた情報だったのだろう。正直、そこまでいう程のことでもないのだが、一気にドドドッと説明パネルを出すのではなく、もう少し穏やかにしたほうが頭に入りやすかったかも、と感じた。

 総じて、満足感のある適度なボリュームでとっつきやすくとても面白い作品。要素は多いが、世界観とのマッチによる違和感の少なさやプレイヤーが理解しやすいようとても丁寧に作られていることが非常に良く感じられた。自然と誰かへオススメしたくなる良作。もちろん、粗を探そうと思えば探せるが、プレイして得られる楽しさや面白さはそれらを優に超えてくる。全体的にコミカルさが全面に出ているため、気持ちが重くならないのも良い。また、その他の様々なエンタメ作品を知っていると、散りばめられたパロディネタにクスッとでき、より楽しめる。初登場時の”サトー氏”には、ちょっと衝撃を受けた。

 本作で特に好きなところは、「ドット絵で描かれた魚たち」だ。浅瀬のカラフルな熱帯魚から中層の存在感ある大型魚、名前すら知らなかった深海魚。果ては、すでに絶滅して化石でしか見つかっていない古代魚まで出てくる。すべて実在する(した)魚なので、ネットで画像を検索してドット絵と見比べてみるのも面白かった。そういう点では知的好奇心も満たされ、一石二鳥である。動きもちゃんと魚っぽく、ただ眺めているだけでも癒やされた。魚や深海などに少なからず興味がある人には、どこか心に引っかかるポイントがあるはずだ。もちろん、ドット絵好きにもおすすめしたい。

 それと余談だが、プレイした人の多くが、いつの間にかダイバーではなく”キュウリ農家”になってしまう(なりかける)という現象が起こるというのも面白かった。私は気づくのが遅れたため、なりかけた程度で済んだ。これからプレイする人は、「”キュウリ”は金になる」ということを覚えておこう。


 そんなわけで、クリア後もモチベーション高くやり込みプレイまでした本作『デイヴ・ザ・ダイバー』が、私のGOTY2024である。未プレイの方は、機会があればぜひ一度プレイしてみてほしい。

 ブルーホールの底で、待っている。
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なんかじっくりやれるシミュレーションゲームやりたいなぁ。ここ数年、ふとそんな思いに駆られることがある。

 今年もそんな衝動がやってきたとき、PSゲームカタログで出会ったのが『Stranded: Alien Dawn』(ストランデッド: エイリアンドーン)だった。

 RPGのように明確なストーリーがあるわけではなく、用意されているシナリオごとに勝利条件の達成を目指してプレイする方式。シナリオを選択すると、30名以上いる生存者の中から任意の数名を選び、さらに難易度とステージを決めたらゲームスタート。プレイ感覚は、シナリオ形式のボードゲームに近い。

 チュートリアルを確認しつつ、生存者たちに指示を出して採集や農業、建築や解体、クラフトや調理、観察や研究を進めていく。凝った演出や誇張表現などはなく、すごく地味な絵面が続く。だが、それがいい。少しずつ増えていく素材の数字と拠点の設備が、ゆっくりと充足感に変わっていく。気づけば5~6時間経っていたこともざらで、2,3時間なんてあっという間だ。

 「あれ?もうこんな時間!? ちょっと……ここをもうちょっとやってから……」

 (1時間後)

 「やばい……もう終わらないと……」

 完全に時間を忘れて没頭した。あれもしたい、これもやっておきたいがずっと続くあの感覚。めっちゃ楽しい。


 最後に惑星を脱出するときも気が抜けない。救援要請できる脱出ポッドは1人乗り用しかなく、2日に1人ずつしか運べない。生存者は全員で5~6名ほどおり、それぞれが役割分担をして全体を回している。それが1人ずつ抜けていくと、徐々に拠点運営に綻びが出始める。無事に最後の1人まで全員脱出させられるのか。脱出させる順番が本当に悩ましかった。
 実は、その最後の脱出のときがプレイ全体で一番緊張した。そこをどうにか乗り越えたとき、達成感と安堵感、満足感が一気に押し寄せて来て、めちゃくちゃ気持ち良かった。

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 本作で私が特に悩み、面白いと思ったのが「拠点づくり」だ。
 拠点は主に、素材の集積場所だったり、エイリアンの襲撃に耐えたり、気温変化や異常気象から生存者を守るために必要になる。拠点となる建物はいくつかのパーツ(基礎、床、壁、屋根など)を組み合わせて作ることができ、素材が許す限り好きな土地に好きな広さで好きな間取りで作れる。
 また、拠点の周りに柵や壁でタワーディフェンスのようなルートを作れば、襲撃してくるエイリアンたちはそこを通ってくれる。この誘導ルートまで含めて考えながら作るのが、とても楽しかった。

 さらに、本作は生存者一人ひとりに大雑把な1日の行動スケジュールを組むシステムとなっている。何時~何時までは仕事、何時~何時までは睡眠、何時~何時までは自由、という具合に設定する。
 生存者たちをどれくらい働かせるかはプレイヤーの自由。極端な話、24時間不眠不休で働かせることもできる。が、そんなことをするとすぐに幸福度は落ち、プレイヤーの指示を聞かなくなる。挙句の果てに、ストレスで発狂して他の生存者を襲いだしたり、拠点の中で暴れまくってせっかく作った設備を壊しまくったりと、悲惨な状況になる。
 そうならないように、生存者たちの性格や好み、ストレスや幸福度にも配慮しながらサバイバルしていく。
 このあたりの細かい要素は、人によっては面倒くさく感じるかもしれない。しかし、私はこの要素があるおかげで、生存者たちに現実に近い”人間味”を感じることができた。生存者たちのバックボーンストーリーはテキストでちょっとあるだけなのだが、「なんとかしてこの人たちを全員無事に脱出させたい!」と、いつの間にか強く思いながらプレイしていた。

 最後に、気になる点もそれなりにあった。が、あまり長々と書くのもアレなので、箇条書きでまとめておく。
・チュートリアルが別モードになっていて完全に分離されていたため、最初は勉強させられている感が強く、モチベーションがなかなか保てなかった
・視点(カメラ)移動の自由度が低く、見たいアングルで見れないことがややストレスだった
・生存者同士の争いや恋愛イベントがわかりにくい(クリア後にこれまで何があったのかをまとめた年表形式のエンドロールが流れるのだが、そこで初めて生存者同士の細かな関係性や恋愛事情が分かる)
・慣れてくるとテンポの悪さを感じるようになり、シナリオも3つ目ともなると、まぁまぁダレてきていた
……などなど。

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 そもそも人を選ぶジャンルなので、大手を振っておすすめできるかは正直微妙なところですが、気になった方は触ってみてください。

 シミュレーション好きにはもちろん、中~重量級ボードゲームなどが好きな方には、特におすすめです。
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久々に会う友人たちとの年末忘年会……という名のゲーム会でめちゃくちゃ盛り上がり、めちゃくちゃ楽しかった作品。

プレイ人数は、2~8人。今回は、Switchでのローカル8人プレイ。何人でプレイしても難易度は同じ。全員ほぼ初見プレイです。

短いステージとシンプルなギミックなのに、”全員で協力して進むこと”のなんと難しく、楽しく、面白いことか。

これだけの多彩なステージとギミックのアイディアを考えたり、バランス調整するの、大変だったろうなぁ。

こんなにも童心に帰れたのは、いつ以来だろうか……。今年の最後の最後に、一年の嫌な思い出をすべて吹き飛ばし、懐かしい友人たちとの最高の時間になりました。

制作者さんには、感謝しかありません。この場を借りて、お礼申し上げます。作ってくださり、本当にありがとうございました!!


RTAやスコアアタックでも目指さない限り、おそらく周回プレイはしないでしょう。ですが、それでもいいんです。その”1回”が、一緒に遊ぶ仲間との最高の体験として”思い出”に残るのですから。

今回は忘年会会場の時間の関係でステージ6までしかできなかったため、また来年が楽しみです。


対応プラットフォームは、Nintendo Switch、Steam、Xbox、Windows。本作『2』からはオンラインクロスプレイもできるようになり、離れていてもお互いにソフトを持っていれば一緒に遊ぶことも可能。(2024年12月31日時点)

協力してステージギミックを解いていくことが楽しいゲームなので、なるべく実況動画等で事前知識を入れずに遊ぶことをおすすめします。

オンラインもいいけど、やっぱローカルで一緒の画面を見ながら遊ぶのは最高だぜ!
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