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デイヴ・ザ・ダイバー

Game of the Year 2024
agari(アグアリ) さん
デイヴ・ザ・ダイバー
ちょこまかと動くかわらしいドット絵。妙にリアルっぽい動きをする魚たち。ストーリーへの引き込み方や好奇心をくすぐられる海中探索、終盤まで小出しにされる新要素の数々など、最後まで飽きることなくプレイ意欲を高めてくれた『デイヴ・ザ・ダイバー』。  久々に、ストーリークリア後も自ら目標を作ってやりこみプレイをするほど楽しめた作品。全体のボリュームも長すぎず短すぎずでちょうど良い。寿司屋パートでは定番のネタから斬新なネタまで想像以上にバリエーションが豊富。最終的にお店に出すネタは利益率の高いものに絞られてしまうが、新しい魚をGETしたときの「この魚はどんな寿司になるのだろうか」というワクワク感がたまらない。  登場キャラは皆クセが強く、なぜか中年おじさん率がとても高いところも本作のユニークさの一つになっている。(嫌いじゃない) 寿司職人”バンチョ”の無駄にかっこいい大げさな調理演出には思わず笑ってしまうが、その清々しいまでの振り切れ方が最高に良い。  魚は海に潜ってフックショット的な「銛(モリ)」で突いて捕るのだが、簡単すぎず難しすぎない絶妙なバランスの難易度。アクションの手触りの良さが特に良い。釣りでは味わえない、魚たちとの直接的な駆け引きを楽しめる。酸素ボンベの残量がそのまま主人公の体力となっている点も、説得力のあるスマートな設計。また、銛自体に強化段階や属性要素があったりと、わかりやすい成長要素もモチベーションが上がる。オープンワールド的な自由度はないが、その分プレイヤーを引き込んでいく計算し尽くされた”面白い、楽しい”が詰まっている。テンポよく進むストーリーや解禁要素も相まり、ストレスをほとんど感じることなく、快適に楽しめた。  また、徐々に温度感が上がっていくストーリーにも引き込まれた。少々気になったのは、一部の登場人物たちを深堀りした話がほとんどないことだ。この点については、どこかの開発者インタビュー記事で、今後スピンオフ的な作品で主人公やキャラたちの深堀りをしていきたいという構想があると読んだことがある。続編を匂わせる終わり方だったことからも、今後の展開が気になっている。  他には、調味料のメイン調達方法である「スタッフの派遣のやり方」も少し気なった。チュートリアルでは「他にこういうこともできるよ」みたいな感じで割とあっさり流されていたように思う。そのため、”派遣”というキーワードは知っていたが、何が得られるのか、どうやって派遣するのか、という使い方までは覚えておらず、結局攻略サイトで調べるまで分からなかった。今思えば、まだあまり慣れていない序盤からどんどん新要素が出てくることに圧倒され、私の頭が一瞬ショートした隙に入ってきた情報だったのだろう。正直、そこまでいう程のことでもないのだが、一気にドドドッと説明パネルを出すのではなく、もう少し穏やかにしたほうが頭に入りやすかったかも、と感じた。  総じて、満足感のある適度なボリュームでとっつきやすくとても面白い作品。要素は多いが、世界観とのマッチによる違和感の少なさやプレイヤーが理解しやすいようとても丁寧に作られていることが非常に良く感じられた。自然と誰かへオススメしたくなる良作。もちろん、粗を探そうと思えば探せるが、プレイして得られる楽しさや面白さはそれらを優に超えてくる。全体的にコミカルさが全面に出ているため、気持ちが重くならないのも良い。また、その他の様々なエンタメ作品を知っていると、散りばめられたパロディネタにクスッとでき、より楽しめる。初登場時の”サトー氏”には、ちょっと衝撃を受けた。  本作で特に好きなところは、「ドット絵で描かれた魚たち」だ。浅瀬のカラフルな熱帯魚から中層の存在感ある大型魚、名前すら知らなかった深海魚。果ては、すでに絶滅して化石でしか見つかっていない古代魚まで出てくる。すべて実在する(した)魚なので、ネットで画像を検索してドット絵と見比べてみるのも面白かった。そういう点では知的好奇心も満たされ、一石二鳥である。動きもちゃんと魚っぽく、ただ眺めているだけでも癒やされた。魚や深海などに少なからず興味がある人には、どこか心に引っかかるポイントがあるはずだ。もちろん、ドット絵好きにもおすすめしたい。  それと余談だが、プレイした人の多くが、いつの間にかダイバーではなく”キュウリ農家”になってしまう(なりかける)という現象が起こるというのも面白かった。私は気づくのが遅れたため、なりかけた程度で済んだ。これからプレイする人は、「”キュウリ”は金になる」ということを覚えておこう。  そんなわけで、クリア後もモチベーション高くやり込みプレイまでした本作『デイヴ・ザ・ダイバー』が、私のGOTY2024である。未プレイの方は、機会があればぜひ一度プレイしてみてほしい。  ブルーホールの底で、待っている。