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リデンプションリーパーズ

Game of the Year 2023
ヒロ@ライトゲーマー さん
リデンプションリーパーズ
リデンプションリーパーズは2023年2月22日にBinary Haze Interactiveから発売された、中世西洋風世界を舞台にしたSRPGです。 突如として現れたモースと呼ばれるモンスターの攻勢に抵抗する人類、その中で『灰鷹旅団』の生き様を描く、世界観はいわゆるダークファンタジーに属するものです。 エンダーリリーズをリリースした同社からの待望の2作目ということで発売前からかなり期待しており、発売日に即購入しました。 端的に言うと、その期待は裏切られることなく、個人的にかなり満足のいく作品となっていました。主人公たち旅団メンバーへの感情移入度が非常に高く、そのためラストシーンは強く胸を打つものがありました。 続編あるいはBinary Haze Interactiveの次回作もぜひ購入したいと思ってます。 まずは全体的な評価から グラフィックは全編通して暗めながら、世界観や重厚なシナリオにマッチしていて、豪華な声優陣の演技力との相乗効果で非常に没入感が高くなっています。(Switch版ではムービーシーンの一部に映像の乱れがありました) BGMは比較的おとなしめな曲が多いですが飽きのこない良曲揃いです。章が進むとステージ間のインターミッションで流れる曲が変化して戦況の厳しさを演出するなど、細かなところでも楽しませてくれます。 また、発売当時に話題になった高い難易度についてはアップデートによるバランス調整で、入手できる資金やアイテムが増えてかなり緩和されました。イージーモードの追加もあってSRPGをあまりプレイしたことがなくても楽しめるようになっていると思います。(これについてはあとで触れますが、自分としてはアップデート前のバランスの方が良かったと思っています) 戦闘面では同一ターン内での複数回行動ができるシステムと連携攻撃の組み合わせで、悩みごたえのあるものになっています。例えば「移動→攻撃→移動→他の仲間の連携攻撃に参加」といった動きも可能です。これを駆使して敵グループを殲滅できたときの達成感や爽快感は、本作の大きな魅力のひとつです。 さらに発売後に行われた大型アップデートによって、より多くのプレイヤーが楽しめるようになっています。大きな変更としてはイージーモードの追加、リソース管理の面でのバランス調整が挙げられます。これによってSRPGは苦手だけどストーリーを楽しみたい方にもオススメできるようになりました。 またどうやっても擁護できないと感じていた「護衛対象のNPCが全力で前線に突撃して孤立する」という残念すぎる点も改善されるなど、不満点も解消されています。 本作はレビューサイトなどでいまいち伸びきらない微妙な点数をつけられているのをよく見かけましたが、最初からこのクオリティであれば世間の評価もまた違っていたのに…と思わざるをえません。 さて、もうすでに話が長くなってきてますがもう少々お付き合いください。 ここからは私が最も強く感じた本作の魅力について語りたいと思います。 一言で言うと それはエンディングです。 「そらそうやろ、当たり前やん」と思われるでしょう。なのでもう少し正確言うと「エンディングをより強く心に刻むべく、ゲーム中のあらゆる要素が灰鷹旅団の5人に感情移入させることに特化している」ことです。 詳しく説明していきます。 まず作品内の俯瞰的な世界情勢についてかなり限定的な描写しかありません。とにかく「モースがあらゆる国で暴れて滅ぼされたようなところもある」ぐらいしかわかりません。具体的な話はほぼ出てきません。よくわからないけれどとにかく目の前の状況をなんとかするために戦い続けます。 マップ攻略中に手に入れられる手紙や日記などのアーカイブもごく個人的な記述ばかりで、やはり大きく世界情勢がわかるものはありません。 世界全体を描かないことでひたすら5人の物語にだけフォーカスし続けます。旅団関係以外はニュアンスだけ伝わればいいやぐらいのスタンスに見えます。 また、資金や武器等が常に不足し、強い武器は使用回数が少ないため弱いものを修理しながら使うというタイトなバランスも、追い詰められた中でなんとか状況を打破していこうとする旅団メンバーの状況にマッチしています。(この点はアップデート前の方がよりよく表現できていたと思います) プレイヤーは頭を悩ませてステージをクリアするたびに、彼らと共に死地をくぐり抜けたような感覚を強くしていくでしょう。 さらに、キャラクターたちが非常に個性的で、しかもその特性がゲームプレイと強くリンクしている点も思い入れを強くしてくれます。 ひとつ例をあげると、あるステージ間の会話において、皮肉屋で他メンバーとの衝突が多いルグが「仲間のことをどうでもいい、なんて言いながら、みんなをカバーするように動いてる」と指摘されるシーンがあります。そこではたと気づくのです。実際に彼は隣接する味方のダメージを軽減するスキルを持っていることに。その見た目と乱暴な物言いでツンデレかよ!?カワイイな、おい! そして次のステージからはめんどくさそうな顔をしながら要所要所で的確に仲間をカバーしていくルグが見えます。見えました。 それ以外にも、リーダー的なポジションであるグレンは味方が隣接しているとバフがかかるスキルを持つ準タンク兼アタッカー。旅団の過去の行いに強い後悔を抱いているサラは、手数が多く回避は高めだが紙装甲で自分の命を軽く見ている、ように感じられる設計になっています。 ちなみにインパクト的には、玄田哲章さんが声をあてている禿頭で眼帯して顔に傷があってツノ付きの肩パッドに毛皮をまとった半裸の巨漢が、メンバー内で1番バランス感覚のある理性的な発言をする立ち位置なのが最高でした。これはもう萌えキャラと言っても過言ではないですね。萌え萌えキュンです。 こうして本来ならあってしかるべき情報やリソースをギリギリまで削り、逆にあらゆる点で旅団メンバーの内面を描くことに心を尽くした構成でがっつり感情移入させられます。その上で叩きつけられるエンディングに心を動かされないわけがありません。ラストシーンで旅団メンバーが空を見上げた時、プレイヤーもまた涙を堪えるように天を仰ぐことでしょう。 長々と語っておいてなんですが、おそらく好き嫌いの分かれるゲームだとも思います。壮大なストーリーではありません。ひとつの傭兵団の、さらにその中のたった5人の物語です。しかし、それゆえに深く深く心に突き刺さるものを持っていると思います。 それなりの頻度でセールもやっていますので、興味を持っていただけたならぜひ一度プレイしてみてください。